• 最終更新日: 2024.10.31
  • 公開日:2023.05.19

【2024年版】EC業界の動向や用語・課題&対策を詳しく解説

【2024年版】EC業界の動向や用語・課題&対策を詳しく解説
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コロナ時代において、業種を問わずECへの新規参入が増えています。ECサイトをカンタンに構築できるサービスも登場しており、参入しやすい環境が整っています。しかし、EC事業を成功させるのは「非常に難しい」事実をご存じでしょうか?今回は、これからECの導入を検討する企業・担当者の方向けに、ECの課題と改善策をあわせて紹介します。

 EC(Eコマース)とは?

EC(Electronic Commerce)は電子商取引と訳されますが、インターネット上で売買するモノやサービス全般のことを指します。Amazonや楽天市場などのECモールはもちろん、メルカリやラクマのフリーマーケットや、Yahoo!オークションもECの中に入ります。

昔はモノを売買する時は、申し込み用紙など「紙」の取引が前提でした。ECは紙を電子に置き換えた取引とイメージするとわかりやすいかもしれません。

EC業界の代表的な4つのビジネスモデル

EC業界はビジネスモデルで分けると、次の4つの区分があります。

種類 意味 ビジネスモデル
BtoC Business to Consumer 企業と一般消費者間での商取引
BtoB Business to Business 企業間で行う商取引
CtoC Consumer to Consumer 個人同士で行う取引
DtoC Direct-to-Consumer 卸売業者等を通さずに消費者へ直接販売

 ECで最も大きな市場は「BtoC」です。個人(Customer)相手に取引する楽天市場やYahoo!ショッピングなどの「モール型ECサイト」や自社サイトも含まれます。「CtoC」はメルカリやフリマのフリーマーケットや、ヤフオクが該当します。個人相手の取引では、1件あたりに発送する商品は少なく、物流が多いのが特徴です。

メーカー企業ならDtoCがオススメ

DtoC(D2C)とは、直訳すると消費者直接取引の意味です。BtoCはAmazonや楽天市場などの小売店を介すため中間マージンや手数料が生じますが、DtoCは消費者と直接取引するためコストカットできます。

また、価格競争やECモールのセール・キャンペーンにとらわれずに自由なプロモーションが可能となり、消費者からもダイレクトに意見をもらうことができます。商品企画〜販売までのスピードが求められるEC業界において、メーカー企業であればDtoCを強くオススメします。

(2021年公表)BtoC市場のEC化率は最大46.20%。物販系の市場規模は13 兆 2,865 億円に

経済産業省の調査(令和3年度 電子商取引に関する市場調査)によると、BtoCのEC市場において、業種を問わずEC導入の動きが見られました。

画像引用:令和3年度 電子商取引に関する市場調査 (METI/経済産業省)

上記の表はBtoC物販系の分野でECに参入した割合です。詳しく見ていくと、書籍や映像・音楽ソフトの分野が46.20%と最もEC化率が高く、食品、飲料、酒類の分野では3.77%とEC化率が低い事が分かります。しかし食品・飲料の分野はEC化率は低いものの、ECの市場規模が前年比から14.1%の成長を果たし、2兆5199億円と非常に大きく伸びています。

結果として全体ではEC化率は0.7%増の8.78%、市場規模も前年比8.61%増の13兆2865億円と大きく成長しています。

(2021年公表)BtoB市場は11.3%成長。EC化率は35.6%に

BtoBのEC市場規模は、2020年前年比で11.3%増え、2021年では372兆円まで成長しました。またEC化率も順調に成長しており、2.1%増の35.6%という結果になりました。

画像引用:令和3年度 電子商取引に関する市場調査 (METI/経済産業省)

2020年ではコロナ禍による外出自粛の影響により観光や外食業が数多く休業し、EC市場も食材や商品を販売する卸売業や輸送業などの市場規模が大きく減少していましたが、2021年には回復し、これまで以上の規模となっているのが分かります。

 (2021年更新)CtoCのEC市場規模の伸び率は12.5%

経済産業省の調査によると、CtoCのEC市場は2021年比で12.9%の伸び率と公表しています。

画像引用:令和3年度 電子商取引に関する市場調査 (METI/経済産業省)

CtoCのEC市場は、主に3つのカテゴリーがあります。

  • 総合プラットフォーム(メルカリ、ヤフオク!など)
  • 特定カテゴリー(アニメ、チケット、本など)
  • ハンドメイド(ミンネ、クリーマなど)

CtoC市場は約20年前にヤフオク!のネットオークションが開始されて以来、拡大し続けています。2012年にメルカリやラクマのフリーマーケットが登場し、さらに市場規模は膨らみました。近年はハンドメイド市場が伸びており、作家が直接ユーザーへ販売できるプラットフォームとして支持されています。

コロナ時代と高齢化がEC市場を牽引

コロナ時代において人々の行動・意識が大きく変わりました。消費者は外出を控えて自宅で買い物ができるECの利用が増え、これまでECと疎遠であった高年齢層にも普及しました。

ネットショッピング利用世帯の割合の推移(世帯主の年齢階級別)

※画像引用:総務省統計局 ネットショッピング利用世帯の割合の推移(世帯主の年齢階級別、2人以上の世帯、2017年1月~2020年6月)

総務省の家計調査によると、ECを利用した世帯(2人以上)の割合が5割を超えたとのこと。とりわけ注目するべき点は、55歳〜64歳の世帯のEC利用が6割近くまで拡大したことです。

これまでインターネットと無縁であった高年齢層においても、外出自粛で利用せざるを得ない状況となり、一気に普及しました。コロナウィルスの5類引き下げなど収束を見せている状況ではありますが、利便性の高いECが今後も支持されるのは想像に難しくありません。とりわけ日本は高齢化社会を迎え、自宅で売買できるECは今後も拡大していくと予想できます。 

(国内EC)売上ランキングTOP5

売上規模の大きいECサイトを、ランキングで見てみましょう。

1位 アマゾンジャパン 1兆7,443億円
2位 ヨドバシカメラ 1,386億円
3位 ZOZO 1,255億円
4位 ビックカメラ 1,081億円
5位 ユニクロ 832億円

※参考:https://www.makeshop.jp/main/know-how/knowledge/ec-site-ranking.html

ECサイトで比較すると、Amazonが圧倒的な首位です。なお「ECモール」で比較すると楽天市場がAmazonを抜いてトップとなります。楽天市場は楽天トラベルや楽天証券など総合ECとして、国内で地位獲得に成功しています。

EC業界のトレンドと覚えておくべき用語

次の業界用語を、ECに携わる方はぜひ抑えておきましょう。

  • 越境EC
  • オムニチャネル(O2O)
  • OMO
  • ID決済

それぞれ詳しく解説します。

越境EC

越境ECとは、日本国内から海外へ向けて商品を販売する方法のことです。ECはインターネット環境さえあれば、国境を問いません。市場規模も毎年右肩上がりで伸びています。

越境EC購入額 伸び率
日本 3,416億円 7.6%
米国 1兆7,108億円 9.9%
中国 4兆2,617億円 16.3%

※引用元:令和2年度 産業経済研究委託事業 (電子商取引に関する市場調査)

特に中国の市場規模の拡大は目覚ましく、米国の3倍近い差があります。自国に売っていない商品を購入できる点や、自国より安価に購入できる点が評価され越境ECは伸びています。

オムニチャネル(O2O)

オムニチャネルとは、オフラインの「実店舗」やオンラインの「ECサイト」、アプリやSNSといったあらゆる販売経路を統合し、総合的に顧客へアプローチする方法です。また似たような意味の言葉として、ECサイトから実店舗へと送客をする事で、顧客の利便性を高めるO2O(Online to Off line)があります。

オムニチャネルの成功事例の一つにイオン株式会社があります。同社はスマートフォンアプリを活用し、売り場に設置されているポップアップを読み込むだけでその商品を使ったレシピがアプリに表示されるようになっています。

また、店舗にはタブレットも設置されており、そこから店舗にない商品を取り寄せる事が出来るようになってます。その際、受け取りは店舗か自宅を選択する事が可能であり、

OMO

OMOとは「Online Merges with Offline」の略語であり、オンラインとオフラインのあらゆるチャネルを融合させたオムニチャネルを発展させ、購入に関わる行動全てをデータとして蓄積し、より良い購買体験(CX)を提供していくビジネスモデルです。

上記の図はGMOクラウドECによるOMO施策の一例ですが、このようにあらゆるチャネルのデータを統合プラットフォーム上で管理・活用する事で、顧客1人1人にパーソナライズされた体験やチャネルを横断したシームレスな購買行動が可能となります。 

ID決済

ECには多様な電子決済があります。自社ECサイトであればとくに、「このサイトは安全か?決済しても大丈夫か?」とユーザーは不安を感じます。見ず知らずのECサイトに大切な個人情報やクレジットカード情報を入力するのはハードルが高く、機会損失の要因にもなります。

そこで注目されているのが「ID決済」です。外部ID決済とは、楽天市場やAmazonなどに登録してある会員情報と連携して決済する方法です。利用者はIDとパスワードのみで決済ができるため、クレジットカード情報を入力する必要がありません。また、お届け先などの情報も外部ID決済によっては不要です。

外部ID決済を利用することで面倒なカート入力が解消し、ユーザビリティが向上することで売上増が期待できます。また、セキュリティ面でクレジットカード情報を入力したくない利用者も多いため、外部ID決済が支持される要因といえます。

EC業界が抱える課題と対策

つづいて課題と対策を見ていきましょう。

ECサイト構築はカンタンだけど集客がむずかしい

ECサイトを構築するには、以前はプログラミング言語やサーバーの知識は不可欠でした。現在は高機能なECサイトがスマホ1台で制作できるサービスも登場しています。ECサイトをつくるのはカンタンですが、集客するのは容易ではありません。

ECサイトの集客は、主に次の4つの方法があります。

  • オーガニック検索(自然検索)
  • ネット広告
  • SNS
  • 直接参照(ダイレクト)

最も即効性があるのは「ネット広告」ですが、費用対効果を高めるにはノウハウや継続した分析は不可欠です。オーガニック検索は無料で集客できますが、上位表示させるには競合が多く簡単ではありません。それに上位表示させるまで数か月〜半年単位の時間はかかります。

ECサイトの運営者は、仕入れや在庫管理などバックヤードの仕事に限らず、フロント側の集客にも注力が必要です。

リピーターがなかなかつかない

EC事業を安定させるには、リピーター獲得が欠かせません。広告投資をして新規ユーザーの獲得し、継続的に購入していただくことで1顧客あたりの顧客生涯価値(LTV)が向上するからです。

リピーター施策が思わしくないと、リピート率は上がらず常に新規ユーザー獲得に投資を続けることになります。リピート率が上がらない理由の多くは、「自社のECサービスに満足してもらえていない」ことにあります。サービスの商品価値はもちろん、メルマガやバースデーメール、キャンペーンなど「顧客満足度を高めてファンになってもらう」施策が大切です。

物流・資材コストの高騰

EC業界は、表向きには「デジタル業界」ですが、裏方の物流は「アナログ業界」であることをご存じでしょうか?

配送を担うドライバーは人手不足が続いており、人件費や燃料費の高騰を受けて運送料は値上げが続いています。

※画像引用:株式会社通販新聞社

2017年を境に、全ての輸送会社で値上げが続いています。近年はAmazonやディノス、セシールなど大手モールも送料無料を廃止する動きが見られます。それでも送料無料のニーズは高く、送料無料か否かでECの売上に大きな影響がでます。競合他社との競争に勝つために、利益を削って送料無料に応じることになりますが、経営的に苦しく撤退するケースも珍しくありません。物流・資材コストを抑えるために、配送サイズや梱包資材の見直しや、運送料の交渉は必須です。

セキュリティ対策は必須

ECは、お客様の個人情報やクレジットカード番号をサーバーに格納します。カートASPであれば、プラットフォーム企業のサーバーで管理され、自社ECであれば自社サーバーに格納されます。いずれの場合もセキュリティ面はおろそかにできません。

不正アクセスなどで個人情報が流出した場合、信用・信頼を失います。場合によっては賠償金を支払うケースもあります。セキュリティ管理に問題点がないか、常にチェックしなければいけません。

プライバシー保護のITPも運営に影響あり

ITP(intelligent tracking prevention)とは、ユーザーのプライバシー保護を目的の機能とした、Safariブラウザ搭載の機能です。主にユーザーの情報を保存できるクッキー(cookie)の利用を制限した機能ですが、ECサイト運営において悩ましい点があります。

  • リターゲティング広告の配信に影響がある
  • コンバージョントラッキングに影響がある

リターゲティング広告とは一度ECサイトに訪問したユーザーに対して広告を配信する方法であり、コンバージョン率が高く売上に大きく寄与しています。ITPの制限が入ると訪問の記録ができなくなり、リターゲティング広告が減少してしまいます。

コンバージョントラッキングにおいても訪問履歴が記録できないことで、分析結果に影響がでてしまいます。

情報過多でEC担当者の判断に迷いが出やすい

ECサイトの担当者が担う業務は多岐に及びます。商品企画やECサイト制作、プロモーションのフロント業務や、受注、在庫管理、出荷、アフターサービスのバックエンド業務まで…。

EC運営は少数精鋭で運営しているのが一般的です。システム化やアウトソーシングして「いかに業務効率化を行うか?」は重要なテーマです。EC市場は規模拡大に比例して各方面の専門会社も無数に存在します。サービスも多様にあるので「どのサービスが自社に合っているか?」見極めはカンタンではありません。

とくにSEOのようなプロモーション代理店においては、効果の裏付けが怪しい会社も多く存在します。高額な委託料を支払っても効果が出ないばかりか、SEOやMEOに悪影響がでることも珍しくありません。十分な見極めが必要です。

まとめ

EC業界の市場規模はもともと拡大傾向でしたが、コロナ時代を超えてさらなる成長産業となりました。次のビジネスやマーケットを考えると、全ての業界においてEC導入は必須と考えて間違いないでしょう。EC業界は競合が多く成功させるのは容易ではありませんが、地域や国を問わずマーケットは広がり、大きなビジネスチャンスを得ることができます。時代の大きな波を乗りこなしましょう。