- 最終更新日: 2024.06.28
- 公開日:2022.11.25
ECサイトのリプレイスで失敗しない4つのポイントとベンダーの選び方
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ECサイトのリプレイスにおいて「思っていたより工数がかかった」「予想以上に労力を要した」というケースは珍しくありません。最大の理由は、異なるECシステムへリプレイスする難易度を見誤っているからです。
ベンダーにおいても、データ移行の知見が乏しいことが多く、作業を丸投げせずに取り組むことが大切です。今回はECサイトのリプレイスのポイントと、ベンダー選びのコツをご紹介します。
目次
ECサイトは3年~5年でリプレイスが行われる
東通メディアの調査(2022年1月)によると、リプレイスする前のECシステムの利用年数は、「3年〜5年未満」が全体の30%で最多でした。
10年以内にリプレイスする割合は、全体の約80%に上ります。ECサイトを運営する中で、リプレイスは誰しもが通る道であると言えるでしょう。
リプレイスを行う最多の理由は機能面の拡充を図るため
東通メディアの調査(2022年1月)によると、リプレイスを行った理由の最多は、「機能面」のバージョンアップが42%。続いてインフラ面が18%、費用面が17%という結果でした。
リプレイスの主な理由を要約すると、次の理由が大半を占めます。
- カスタマイズ費用が高い
- ランニングコストが高いから安くしたい
- 動作の速度やセキュリティを強化したい
- 集計や分析の効率を上げたい
EC事業が拡大するにつれて、現状のECシステムでは手狭に感じてしまう。そのタイミングがリプレイスを行うきっかけです。
ECサイトをリプレイスするときは目的を明確にする
ECサイトを構築できるシステムは、次の種類があります。
- ECモール
- カートASP
- ECパッケージ
- オープンソース
- クラウドEC
- フルスクラッチ
ECシステムは低コストほどカスタマイズの自由度は乏しく、反対にカスタマイズ自由度が高いほど構築費用は高くなります。システムによって長所・短所はありますが、「ランニングコストが安いから」や「カスタマイズしやすいから」という理由だけで選ぶと失敗リスクが高まります。その理由を含めて次の章で詳しく紹介します。
ECサイトのリプレイス準備にチェックする4つのポイント
リプレイスする際は、次の4つをチェックしましょう。
- 現状のECシステムにおける、課題を洗い出す
- ECリプレイスの目的をはっきりさせる
- 必要な要件をまとめる
- プロジェクト全体のスケジュールを決める
ひとつずつ見ていきましょう。
現状のECシステムにおける課題を洗い出す
まずはEC運営にかかわる関係者に、現在利用しているECシステムの不満点をヒアリングしましょう。
- ランニング費用が高い:33.7%
- 動作の速度や安定性への不安:32.6%
- 集計や分析がしづらい:29.3%
- カスタマイズ費用が高い:28.3%
- 外部連携がしづらい:19.6%
- 個別カスタマイズができない:18.5%
- 顧客属性に紐づけられる項目が少ない:17.4%
上記は東通メディアの調査で多くの回答があったリプレイス前の不満点です。
課題によっては、リプレイス以外で解決できる方法があるかもしれません。例えば「作業効率を上げる」ためにシステム化は大切ですが、社内の業務フローに無駄がないかを一度整理することで、解決に至るケースもあります。課題をしっかり精査することで、リプレイスの費用を抑えることも可能です。
ECリプレイスの目的をはっきりさせる
課題を整理した後は、リプレイスすることで達成できるゴール(目的)を明確にしましょう。
- サイトの動作を早くしてユーザーの離脱を防ぎたい
- オムニチャネルを進めて客単価を向上させたい
- 複数のサイトやブランドの情報を一元管理したい
- 越境ECサイトを作り売上アップさせたい
リプレイスにおいて、単純に「コストを下げたい」という理由だけでは失敗する可能性は高まります。EC事業において最終的なゴールは「売上」。ゴールを達成するためには、必要な機能やデザインを満たすことや、仮説〜検証のPDCAを高速で回すことが求められます。目標から逆算して、いつまでに、どんな施策を打つべきかを試算することが大切です。
必要な要件をまとめる
自社の課題を解決し、目標達成に必要な要件をまとめましょう。例えば海外マーケットで拡販を狙うなら、ECシステムは越境ECに対応している事が必須。国によって好まれる決済方法や配送方法が異なりますので、ターゲットの国を限定して調査すると的確に要件をまとめられます。また、必要な要件がイメージしづらいときは、ライバル会社のECサイトを調査してみると良いでしょう。
プロジェクト全体のスケジュールを決める
必要な要件が明確になれば、リプレイスを検討しているECシステムのベンダーに相談しましょう。ここで大切なのはベンダーに丸投げしないこと。丸投げすると機能やデザインに相違が生じやすく、かえって労力とコストがかかります。事実、リプレイスで最も不満に感じるのは「予定よりリプレイスまで時間がかかった」や、「当初の予定よりコストがかかった」という点です。ベンダー側にだけ原因があるとは言いきれません。
目的に合ったカートシステムを選ぶ方法
ECシステム選びに失敗しないポイントは次の3つです。
- 3年~5年を見越した拡張性
- サポート体制の充実度
- カートシステムの将来性
ひとつずつ詳しく見ていきましょう。
3年~5年を見越した拡張性
ECシステムは一度構築すると、簡単に移行できません。施策を行う中で機能追加・変更は度々発生しますが、カスタマイズが容易ではなく、費用が高額だと思うように実行できず機会損失になることも。ECシステムは3年~5年先を見据えて十分な拡張性のある製品を選びましょう。
サポート体制の充実度
自己責任で構築するオープンソースやフルスクラッチであれば、トラブル発生時も自分で解決しなくていけません。もしベンダーにシステム開発を委託するのであれば、急なトラブル時はどこまでサポートしてもらえるか。また、無償・有償の範囲はどこまでかを確認しましょう。
カートシステムの将来性を見極める
カートASPなどのシステムを利用する場合、プラットフォーム側のサーバー内にECサイトを構築することになります。そのため、プラットフォーム側でサービス撤退するリスクを考えておかなければいけません。
サービス撤退は珍しいことではなく、最近では食品や日用品などを必要な分だけ購入できるサービス「Amazonパントリー」が2021年8月31日で撤退しました。
他にもauユーザー向けのECサイト「au WALLET Market」が2021年10月31日にサービス休止しました。構築したECシステムのサービスが休止となった場合は、別のECシステムへ移行しなくてはいけないため、余分な労力とコストがかかります。
ベンダー選びで失敗しないためのチェックポイント
ECパッケージなどへ移行するなら、システム開発をベンダーへ委託することになります。また、ベンダーに委託すれば、リプレイス後も改修やメンテナンスなどをサポートしてもらうことになります。パートナーになるベンダー選びに失敗しないポイントは次の3つです。
- ECサイト運用に詳しく信頼がおけること
- 「安さ」だけを売りにしていないこと
- 財務基盤が安定したベンダーを選ぶ
詳しく見ていきましょう。
ECサイト運用に詳しく信頼のおける会社であること
新しいカートシステムへリプレイスする際は、慣れ親しんだシステムとは全く異なる場所で構築することになります。カートシステムによって特有のクセがあります。「郷に行けば郷に従う」ではないですが、ベンダーは郷の最適な案内役であることが求められます。ベンダーは、カートシステムの知識や経験値はもちろん、既存ECサイトの構造を理解して解読し移行させる技量が欠かせません。
ベンダーの力量は過去の制作実績を参考にしましょう。自社が要求する機能を構築した経験や、構築した件数などを確認します。また、ECサイトにおいては単純にデザインが格好よければ良いわけではなく、日々の運用で使い勝手の良さも大切。EC運用の実務に詳しい会社を選ぶことが大切です。
「安さ」だけを売りにしているベンダーは要注意
システム開発において、予算を左右するのは開発工数のボリュームです。システム開発に要する費用の算出には「工数」という単位が用いられます。工数はシステムを構築する上で必要な人数と、1人当たりの作業期間(月単位の単価)とを掛け合わせたものです。要求する機能によっては、パッケージや開発経験があれば開発工数を削減し予算を抑えられることもあります。しかし、あまりにも安すぎる場合は要件を正しく理解していない可能性があるので注意しましょう。
リプレイスしただけではSEOの効果は期待できない
「SEOに強い」「集客に優れている」という宣伝文句を鵜呑みにしてはいけません。どのECプラットフォームを利用しても通常は内部SEO対策が施されていますので、よほどの設計ミスがない限り大きな差はないためです。ECプラットフォームにおけるSEO対策は、商品詳細ページなどにmetaタグを実装される内部施策であるため大きな効果はありません。SEO対策はコンテンツマーケティングなど集客施策が別途必要です。
財務基盤が安定したベンダーを選ぶ
システム開発会社は1つのシステム開発で数ヶ月の工数がかかります。システム開発の売上が立つのはシステム納品後となるため、納品までは資金繰りが苦しくなることもあります。経営状態が苦しいと製品の品質を保てない可能性がありますし、経営が立ちゆかなくなった場合はサポートを受けられないリスクもあります。発注する前に帝国データバンクなどの会社情報を利用して、財務状況をしっかり調べましょう。
ECリプレイスにおけるデータ移行の注意点
ECサイトのリプレイスで一番の山場はデータ移行です。同じカートシステムへ移行するのであれば問題ありませんが、異なるカートシステムへの移行は容易ではありません。ベンダーにおいても自社カートシステムの仕様は熟知していても、他社のカートシステムの構造を熟知しているとは言えず慎重に行わなくてはいけません。
ECサイトのデータは「商品データ」「下層ページデータ」「受注データ」「会員データ」の4種類があります。それぞれ移行の注意点を解説します。
商品データ
カートASPのような一般的なカートシステムを利用していれば、商品データ(商品名、価格、詳細情報など)をCSVで入出力できます。CSVが不可のカートシステムにおいては、手動で商品データを抽出しなくてはならず、手間とコストがかかります。
商品画像はFTPなどで一括ダウンロードし、新しい環境へアップロードするのみでOKです。また、カテゴリに関しては新システムの管理画面で直接設定できますが、項目が多い場合はカテゴリ構成表を作成し登録するなどの方法があります。商品データの移行後はデータ漏れがないか、文字化けがないかチェックしましょう。
下層ページデータ
ECサイトには、次の下層ページがあります。
- ショッピングガイド
- よくある質問
- 特定商取引に基づく表記
- プライバシーポリシー
- 会社概要
これらのコンテンツ内容に変更がなければ、基本的に流し込む作業だけでスムーズに移行できます。ただし、新カートシステムのテンプレートが変更となる場合は、デザインが崩れることもあるのでチェックしましょう。
受注データ
受注データは、カートシステムによって仕様が大きく異なります。移行する場合は、綿密なデータ解析と検証が必要になり膨大な労力とコストを要すため、移行しないケースもめずらしくありません。受注データは移行しなくても、購入履歴や分析は可能です。また、マイページなどでユーザーに購入履歴を表示させたい場合は、専用のデータベースを構築し参照するなどの方法があるので、移行は必須ではありません。
ネットショップを多店舗運営している事業者の方は、CROSS MALLやネクストエンジンなどの受注・在庫管理システムを使われているかとおもいます。リプレイスに際し、新カートと連携可能かを事前にチェックしましょう。
顧客会員データ
ASPカートなどを利用していれば、顧客会員データをCSV入出力が可能です。移行可能な会員データは次の項目です。
- 氏名
- 住所
- メールアドレス
- ID
- パスワード(※)
- レビュー
- ポイント
パスワードは暗号化(ハッシュ化)されている場合は移行できません。その場合は、顧客へ再度パスワードの再設定をご案内する必要があります。また、定期便や頒布会などの決済を毎月クレジットカードで自動オーソリしている場合、ペイメント会社によっては顧客情報を移行できないケースがあります。
まとめ
今回はECサイトのリプレイスにおける注意点を中心に解説しました。リプレイスする際、システム開発会社へ作業を丸投げするケースは非常に多いですが、自社の課題と目標がブレると期待通りの機能やデザインが実現できません。結果として機能を作り直したりすることで余計な手間とコストがかかります。
新しいカートシステムへ移行するのであれば、データ移行に苦労します。スケジュールどおり完成させるためにも、積極的にリプレイスに関わっていきましょう。
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