• 最終更新日: 2024.08.30
  • 公開日:2023.01.31

食品ECが抱える課題とは?運用ポイントや事例、市場規模から売上高ランキングまで

食品ECが抱える課題とは?運用ポイントや事例、市場規模から売上高ランキングまで
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まず、日本の食品ECサイトの現状からみていきましょう。

ここでは、食品業界の市場規模や食品ECの種類、EC化率について紹介します。

食品業界全体の市場規模

経済産業省の「商業動態統計調査」によると2022年の業種別商業販売額のうち「飲食料品小売業」の合計額は、対前年比0.4%増の45兆5210億円となっています。※1

常に需要が尽きない業態のため、「飲食料品小売業」全体の販売額はゆるやかな変化のみとなっていますが、EC市場規模は2021年には2兆5,199億円となり、前年比14.10%の増加。2022年には2兆7,505億円となり、前年比9.15%と大きく成長を続けております。※2

全体の販売額が変わらないのにも関わらず、ECの市場規模が続いている背景にはユーザーの需要の変化と、事業者が新しい取り組みを行った事による利便性の向上があると考えられます。

※1 参考:https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/syoudou/index.html
※2 参考:https://www.meti.go.jp/press/2023/08/20230831002/20230831002-1.pdf

食品ECの種類

新規参入企業が増える食品ECですが、その種類は大きく3つにわけられます。

一般的な食品EC

一般的な食品ECは野菜や肉などの生鮮食品・加工食品・飲料品・酒類などを販売するECサイトで、小売店や百貨店などの販売業者をはじめ、食品メーカーや農家が直接販売するケースもあります。

産地直送や人気店舗などの「お取り寄せ」などもこのカテゴリに含まれ、自社ECサイトもしくはモール出店にて運営するのが一般的です。

定期販売

定期販売の食品ECは、毎週や毎月など、定期的に食材や加工品を配達するECのことで、「食材宅配」や「定期便」、「食品サブスク」といわれることもあります。最近では、生鮮品以外にもカット野菜と調味料がセットになった「ミールキット」も人気。

重い食品を持ち運びたくない人や料理する手間を省きたい人、健康食品を継続して食べたい人など、ターゲットは多岐にわたります。

ネットスーパー

実店舗のスーパーが、ECサイトから注文を受けて食品を配達するのがネットスーパーです。生鮮品から日用品までさまざまな商品が販売されており、ショップによっては特売商品を設定して売り出すことも。対象地域であれば「15時までの注文で当日配達」や、「最短2時間で配達」などの対応をおこなっているショップもあり、高齢者層・中高年層を中心に利用されています。

また、近年ではオンラインのみで展開するネットスーパーも増えています。

食品業界のEC化率について

以下の表は、経済産業省が調査した令和4年度の「電子商取引に関する市場調査」から、BtoCの物販系分野における市場規模とEC化率をまとめたものです。

分類 2020年の市場規模(億円) 2020年のEC化率 2021年の市場規模(億円) 2021年のEC化率 2022年の市場規模(億円) 2022年のEC化率
食品、飲料、酒類 22,086 3.31% 25,199 3.77% 27,505 4.16%
生活家電、AV機器、PC・周辺機器等 23,489 37.45% 24,584 38.13% 25,528 42.01%
書籍、映像・音楽ソフト 16,238 42.97% 17,518 46.20% 18,222 52.16%
化粧品、医薬品 7,787 6.72% 8,552 7.52% 9,191 8.24%
生活雑貨、家具、インテリア 21,322 26.03% 22,752 28.25% 23,541 29.59%
衣類、服装雑貨等 22,203 19.44% 24,279 21.15% 25,499 21.56%
自動車、自動二輪車、パーツ等 2,784 3.23% 3,016 3.86% 3,183 3.98%
その他 6,423 1.85% 6,964 1.96% 7,327 1.89%
合計 122,333 8.08% 132,865 8.78% 139,997 9.13%

参考:https://www.meti.go.jp/press/2023/08/20230831002/20230831002-1.pdf

2022年の食品のEC市場規模は2兆7,505億円で、前年2021年の2兆5,199億円よりプラスに推移し、EC化率も4.16%となりました。食品業界のEC市場規模は生活家電や衣服などのジャンルを抜き、BtoC-ECで最も大きな市場規模に成長しています。

しかし、EC化率は他の業界に比べると非常に低いものとなっております。生活家電・AV機器のEC化率は42.01%、衣類・服飾雑貨のEC化率も21.56%であり、食品の4.16%と比べるとその差は非常に大きいものとなっています。このように大きな市場規模があるにも関わらずEC化率が伸びないのには食品というカテゴリでのECサイト構築に課題を抱えているからです。

食品ECが抱える3つの課題

食品業界においてEC化が進まない原因は、一体どこにあるのでしょうか?ここでは、食品ECが抱える3つの課題について紹介します。

鮮度が重視される生鮮食品の取り扱いが難しい

多くの消費者は、野菜や肉・魚などの生鮮食品は鮮度のよいものを購入したいと考えています。生鮮食品は家電製品のように、「型番が同じなら商品レベルも同じ」というわけではありません。

商品一つひとつに個体差があるからこそ、「より鮮度のよいものを購入したい」という消費者にとって、ECサイトでの購入はハードルの高い購入方法と考えられます。

消費者の身近にある実店舗の方が利便性が高い

2つ目の課題は、生活圏内にスーパーやコンビニなどの実店舗がある消費者にとって、ECサイトで購入するよりも身近なお店の方が、利便性が高いことです。

ECサイトには、「インターネット環境さえあれば、いつでもどこからでも商品が購入できる」という便利さはあるものの、身近な店舗で欲しいときにすぐに購入できる強みにはかないません。

利益率が低く、コストが高い

食品は一つひとつの商品単価が安く、利益率が高くありません。また、鮮度の高い生鮮食品を消費者のもとに届けるためには、スピード感のある配達を可能にする物流システムの導入が必要となります。

生鮮食品のなかにはチルドや冷凍などの温度管理が必要な場合も多く、物流コストがかかってしまうことも大きな課題となっています。

食品ECのメリット

これまで実店舗のみで営業していた場合でも、オンラインを上手に活用することで売上を伸ばすことが可能になります。

ここでは、食品ECの代表的なメリットを4つ紹介します。

24時間365日購入できる

ECサイトに商品ページを作っておけば、消費者は24時間365日いつでも買い物できるようになります。インターネット総合ショッピングモールのQoo10がおこなった調査によると、ECをもっとも利用する時間帯は20〜23時とのことです。※3

「自宅でゆっくりしている夜の時間帯にECサイトを利用する人が多い」ということが、この調査からうかがえます。わざわざ店舗に足を運ぶ必要がなく、隙間時間や好きなタイミングで利用できるのは大きなメリットといえるでしょう。

※3 参考:https://ecnomikata.com/ecnews/23777/

お取り寄せ商品などニッチな商品も取り扱える

実店舗には商品を陳列するスペースに制限がありますが、ECサイトでは商品の画像や情報を登録するだけで販売できるため、あらゆる商品の取扱いが可能になります。たとえばお取り寄せ商品やニッチな商品など、他店舗が扱わない商品を取り揃えることでリピーターを増やすこともできるでしょう。

このように取扱商品を柔軟に考えられることは、食品ECの優れている点といえます。

商品の詳しい情報を消費者に伝えられる

ECサイトでは、商品の詳しい情報を消費者に伝えられることもメリットの1つです。実店舗で「生産者の声」のようなPOPをつけているように、ECサイトでも商品情報や生産者・メーカーの思いを文章や画像で伝えられます。

ただ単に商品を紹介するだけでなく、農家やショップ側のメッセージが伝わるように工夫することで消費者の心に訴えかけられて、購買意欲を高める効果に期待できるでしょう。

コロナ禍において感染リスクを下げられる

ECサイトでのショッピングは、感染リスクを下げられるというメリットもあります。実店舗しかない場合、外出しなければ商品を購入できませんが、ECサイトがあれば自宅からでも商品が注文できるため、感染リスクを気にする必要がありません。

また、最近では置き配サービス(玄関前や宅配ボックスに荷物を配達してもらうサービス)も浸透しており、完全に非対面で安心して買い物できるシステムも整っています。

食品ECの売上高ランキングTOP5

ここからは、食品ECの売上高ランキングTOP5を紹介します。
どのようなECサイトでどのくらいの売上があがっているのかを知り、食品ECの現状把握につなげましょう。

なお、これから紹介する売上高ランキングは、日本流通産業新聞の調査を参考にしたものとなります。

参考:https://www.bci.co.jp/nichiryu/feature/1636

アマゾン(日本事業)

引用:https://www.amazon.co.jp/alm/storefront?almBrandId=QW1hem9uIEZyZXNo&ref=fs_dsk_sn_logo

食品ECの売上高ランキング1位は、アマゾン(日本事業)です。アマゾンでは食品EC「Amazonフレッシュ」を展開しており、2020年度の売上高は推定600億円。

プライム会員向けのセールや新料金プランを導入したり、食品スーパーライフとの協業により販売地域を関西圏まで広げたりと、今後も成長に期待できる食品ECモールです。

オイシックス・ラ・大地

引用:https://www.oisixradaichi.co.jp/

食品ECの売上高ランキング2位は、2020年度の売上高498億円のオイシックス・ラ・大地です。

オイシックス・ラ・大地は、有機野菜やオリジナル加工食品・料理キットなどを扱う「Oisix」を展開しており、前期比39%増と定期会員数を順調に伸ばしています。

イトーヨーカ堂

引用:https://www.itoyokado.co.jp/

食品ECの売上高ランキング3位となったのが、2020年度の売上高357億円のイトーヨーカ堂。

献立から自動で買い物リストを作成するアプリの導入(現在はサービス終了)や、ログインの手間を省き感覚的に買い物できる『イトーヨーカドーネットスーパーアプリ』の導入など、消費者目線で使いやすいECサイト運営をおこなっています。

楽天グループ

引用:https://www.rakuten.co.jp/category/food/

食品ECの売上高ランキング4位は、2020年度の売上高300億円の楽天グループです。グループ自体の知名度が高く、会員登録者数もトップクラス。Amazonとの大きな違いは、楽天市場への登録は商品単位ではなく店舗単位になることです。

登録店舗数が多いため価格競争はおこりやすいものの、イベント時の販促企画による売上の伸びに期待できます。

ベルーナ

引用:https://belluna-gourmet.com/

食品ECの売上高ランキング5位は、2020年度の売上高266億円のベルーナです。服飾・雑貨類やホームウェアなどの総合通販をおこなっているベルーナですが、食品ECでは「ベルーナグルメ」を展開。

生鮮品や加工食品をはじめ、食品定期コースでは惣菜セットなどの商品を取り揃えており、クーポンの配布やメルマガ発行なども積極的におこなっています。

食品ECの運用ポイント

ここからは、食品ECの運用ポイントについて紹介します。事業成功へとつながるポイントでもあるため、しっかりとチェックしておきましょう。

物流拠点・物流システムの整備

生鮮品を扱う食品ECでは、物流拠点をはじめとする物流システムを整えなければなりません。鮮度を保つための温度管理や、商品がつぶれないようにする梱包方法・梱包材の準備などは必須です。

消費者に安心して利用してもらうために、品質を落とさずに配送するシステム構築は食品ECを運用するうえで欠かせないポイントとなります。

サブスクリプションサービス

サブスクリプションとは、定期料金を支払うことでその期間サービスや商品を提供するビジネスモデルのことです。食品は消耗品であり、さらに食事は生きるうえで欠かせないため、食品ECとサブスクリプションは相性がよいと考えられるでしょう。

また、食品ECでのサブスクリプションでは、契約人数が把握できることで毎月の売上確保や、機会損失・過剰生産による食品ロスが防げるなどのメリットもあります。

まとめ買いサービス

消費期限の長い商品や定期的に消費する商品、大人数で楽しめる商品などは、まとめ買いサービスを導入するのもよいでしょう。実店舗にもある業務スーパーのような業務用食品用ページを設けて、冷凍食品やレトルト食品、インスタント食品を扱うのも1つの方法です。

また、在庫商品を売り切りたい場合は、まとめ買いにより単価を下げるなどの施策も有効です。

地域限定の特産品や名産品の販売

地域限定の特産品や名産品を扱うことで、新規顧客の開拓やリピーター増加に期待できます。実店舗であればその土地へ行かなければ購入できませんが、ECサイトなら自宅にいながら離れた地域の特産品も購入できます。

「このサイトなら〇〇の商品が買える」というイメージを消費者に持ってもらうことで、再訪のチャンスを増やせるでしょう。

自社のオリジナリティの提供

他社にはないオリジナリティを提供することで、自社ECサイトを利用する消費者を増やすことができます。定期購入による特典やギフト対応など、独自の施策を考えてみましょう。
オリジナリティを確立するためには、ターゲットやコンセプトなどをもとにしたマーケティング調査をしっかりとおこない、消費者に「また利用したい」と思ってもらえる内容にすることが大切です。

食品ECの事例

ここからは、GMOクラウドECで食品EC構築した食品ECの事例をいくつかご紹介致します。

静岡うまちょく便

静岡うまちょく便https://umachokubin.com/

株式会社TTC様が運営する、マーケットプレイス型(産直型)のECサイトです。「静岡からうまいものを全国へ」をコンセプトに、生産者から全国へ直接商品をお届けしています。GMOクラウドECの「メーカー直送システム」を採用することにより、生産者が商品の出荷に専念出来るような仕組み作りがされており、現在では120前後の生産者が登録しています。

機能や事例詳細は以下のページよりどうぞ

> メーカー直送システムのページ

> 事例一覧のページ

ハウス食品グループ様

every HOUSEhttps://www.every-house.jp/concept/
ハウスダイレクトhttps://www.house-direct.jp/

ハウス食品様が運営するマルチブランド型(統合管理型)ECサイトで「every HOUSE」「ハウスダイレクト」の2種類のサイトを構築致しました。多岐に渡るブランド展開をスムーズに行う為、GMOクラウドECのマルチブランド構築を行い、1つの管理基盤上で複数のフロントサイト・チャネルの展開が可能となっております。

「every HOUSE」では「おうち時間をもっとたのしく!」をコンセプトに、食品と共にレシピや体験を届けています。「ハウスダイレクト」では、健康食品・サプリメントを取扱い、ユーザーの健康をサポートしています。

どちらのサイトもブランド毎にコンセプトを明確にし、商品を売るだけでなくUX(ユーザーの体験)を良いものへと最大化する事へ力を入れています。

機能や事例詳細は以下のページよりどうぞ

> 中・大規模向けECサイト構築のページ

> 事例一覧のページ

まとめ

食品ECにはさまざまな課題があり、EC化率は決して高いとはいえません。

オンラインで食品を販売するためには、品質維持のための管理や物流システムの構築など、整備すべき部分がたくさんあります。しかし、自宅にいながら買い物ができるECを利用する人は増えており、食品業界で成功している事例も多く見られます。

消費者のターゲットやニーズをしっかりと調査し、ユーザーの満足度の高いECサイト制作・運営を心がけましょう。