• 最終更新日: 2024.10.31
  • 公開日:2022.02.10

フルスクラッチの意味とは?メリットやデメリット、開発のポイントを解説

フルスクラッチの意味とは?メリットやデメリット、開発のポイントを解説
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ECサイトの作成や、システムを導入する方法のひとつに、フルスクラッチと呼ばれるものがあります。馴染みのない人にとっては難しいかもしれませんが、開発手法のひとつとして、頻出する用語です。今回は、フルスクラッチという開発手法の意味やメリット・デメリットについてご紹介します。

フルスクラッチとはゼロから新規開発すること

フルスクラッチとは、ソフトウェアやシステムをゼロからつくりあげることです。
システムを構築する場合、基本はゼロからつくるものと考えられがちですが、フルスクラッチで開発するケースは多くありません。既存のプラットフォームを利用したり、システムを流用したりして、部分的に機能の修正や追加をするのが一般的です。
フルスクラッチではフルオーダーメイドのシステムを構築するため、膨大なコストや時間がかかります。

フルスクラッチとパッケージ(ハーフスクラッチ)の違い

フルスクラッチとパッケージ(ハーフスクラッチ)の違い
フルスクラッチとよく比較されるのがパッケージ(ハーフスクラッチ)です。パッケージ開発とは、既存のパッケージソフトウェアをもとに、機能の修正や追加をする構築方法です。
パッケージ開発では基本的な部分は既存のシステムを流用しつつ、必要に応じてカスタマイズを加えるため、コストパフォーマンスに優れています。一方で、どうしてもカスタマイズが出来ない範囲があったり、運用側がパッケージソフトウェア側の仕様に合わせなければならない事があります。

フルスクラッチ開発の流れ

フルスクラッチ開発の流れ
フルスクラッチ開発ではゼロからシステムを開発するため、工数や手順は多くなります。以下のような流れで進めるケースが一般的です。

  1. 要件定義
  2. 設計
  3. 開発
  4. テスト
  5. 運用

はじめの要件定義ではシステムの用途、必要な機能などを洗い出します。要件定義の際に希望事項があいまいだったり、発注側と制作会社の認識がずれていたりすると、最適なシステムを構築できません。
要件定義後は、作成した仕様書にもとづいて設計・開発を進めます。もっとも時間を要するのが設計・開発のフェーズです。Web制作では設計や開発だけで半年程度かかるケースもあります。

フルスクラッチのメリット

フルスクラッチのメリット
フルスクラッチはコストや時間がかかりますが、その分メリットがあります。フルスクラッチを検討する際は、メリットを理解したうえでほかの構築方法と比較することが大切です。
以下では、フルスクラッチのメリットについて解説します。

自社に最適なシステムを構築できる

フルスクラッチはまっさらな状態からシステムを開発します。プラットフォームの設計や仕様に至るまで、すべて自社のニーズに応じて最適化できるため、技術次第でどんな要件にも対応可能です。
自社にとって最適なシステムとは事業者目線だけではありません。ユーザーにとっても利用しやすいシステムを構築できるため、顧客満足度の向上にもつながるでしょう。

保守や機能追加をしやすい

システムは開発して終わりではありません。運用中の保守対応はもちろん、場合によっては新たな機能の追加が必要です。しかし、パッケージソフトウェアを利用していると、ベンダーで対応できない部分は開発元に依頼するケースもあります。そのため、一部の対応にはコストや時間がかかります。
一方、フルスクラッチは開発元がベンダーとなるため、保守や機能追加は範囲を問わず対応可能です。自社専用のシステムは、サービス終了の可能性がない点も魅力的です。

カスタマイズの自由度が高い

ゼロから構築するフルスクラッチは、カスタマイズの自由度の高さも抜群です。Webサイトのデザインや挙動、機能に至るまで、すべての要望を満たしたシステムを開発できます。パッケージでもある程度はカスタマイズできるものの、プラットフォームの都合上対応できない部分もあります。
競合他社と差別化を図るうえでフルカスタマイズしたい場合には、フルスクラッチがおすすめです。

フルスクラッチのデメリット

フルスクラッチのデメリット
フルスクラッチは自由な開発ができる一方で、高いコストや技術力を要します。いずれもフルスクラッチならではのデメリットといえるでしょう。
以下では、それぞれのデメリットについて紹介します。

構築にかかるコストが高い

フルスクラッチでは、一般的に初期費用1,000万円以上、月額費用も数十万円以上がかかります。売上が見込める状態でなければ制作にとりかかれないだけでなく、初期段階から予算に余裕がないと難しい構築方法です。
また、構築後にもセキュリティ面のアップデートや、機能追加などが発生する場合には、その都度コストがかかるためランニングコスト面でも相応の予算が必要になります。
ECサイトの場合、フルスクラッチで構築すべき年商の目安は10億円以上といわれています。

高い技術力が求められる

システムをゼロから構築するには、高い技術力をもった人材が必要です。デザイナーやエンジニアをはじめ、インフラやセキュリティの担当者など、さまざまなジャンルのスペシャリストが求められます。そのため、フルスクラッチに対応できる制作会社はそう多くありません。また、インハウスで対応する場合には、制作に際して新規雇用が必要になるケースもあります。

フルスクラッチとそのほかの構築方法を比較

フルスクラッチとそのほかの構築方法を比較
ECサイトを構築する方法には、フルスクラッチ以外にもカートASPやオープンソースなどがあります。フルスクラッチとよく比較されるパッケージも選択肢の一つです。
以下では、初期費用や導入までの期間などをもとに、フルスクラッチとそのほかの構築方法を比較します。

初期費用

初期費用の面で優れているのはカートASPやオープンソースです。いずれも無料で利用できるサービスがあるため、インハウスで構築するのであれば初期費用ゼロでECサイトを開設することもできます。
一方、パッケージやフルスクラッチの初期費用は高額です。パッケージは500万円から、フルスクラッチは1,000万円からが相場です。デザインや機能によってはさらに高額になるケースも多くあります。

構築~導入までの期間

構築から導入までの期間がもっとも短いのはカートASPです。カートASPはテンプレートを選んで、基本的なカスタマイズのみでECサイトを開設できます。手軽さはカートASPの強みです。
オープンソースやパッケージ、クラウドECは、既存のソフトウェアにカスタマイズを加えるため、プラグインのインストールやコーディングなどの工数がかかります。なお、フルスクラッチの場合はゼロから開発するため、オープンソースやパッケージ、クラウドECよりも膨大な時間が必要です。

セキュリティ面

セキュリティ面で優れているのはカートASPやクラウドECです。オンラインでサービスを利用する仕組みのため、システムは運営会社によってつねに最新に保たれています。セキュリティ性を高めるうえでシステムの最新性は非常に重要です。たとえば、システムが古いと新たに出現したマルウェアに対応できません。
パッケージとフルスクラッチも危険ではありませんが、サーバーにインストールして利用するため、自動アップデートはできずシステムが老朽化します。その結果、数年単位で定期的にアップデートを施さないと、セキュリティ面のリスクが高まります。
もっとも危険なのはオープンソースです。ソースコードを公開しているため、脆弱性を突かれやすく、セキュリティ対策が必須です。
ECサイトを構築するうえで、顧客情報は切っても切れない重要なデータです。万が一、顧客情報の漏えいがあった際には賠償問題に発展する場合もあるため、セキュリティ面には最新の注意を払いましょう。

カスタマイズ性

もっともカスタマイズ性が高いのはフルスクラッチです。パッケージやクラウドECもプラットフォームが対応できる範囲であれば、自由にカスタマイズできますが、フルスクラッチにはおよびません。
また、カートASPの場合、利用できるのはもともと実装されている機能のみです。独自のカスタマイズは一切できないため、自由度を求める事業者には不向きです。

フルスクラッチが向いているケース

フルスクラッチが向いているケース
フルスクラッチは、自社に最適なシステムを構築できるうえ、デザインや機能も自由にカスタマイズできます。しかし、コストや時間もかかるため、フルスクラッチが向いているケースでなければあまりおすすめできません。
以下では、フルスクラッチを利用すべき場合について解説します。

独自のシステムを構築したい場合

既存のプラットフォームでは対応できないような独自の要件がある場合、フルスクラッチでの開発がおすすめです。たとえば、複雑なシステム連携やデータ移行、企業の業務フローに合わせた要件があるケースなどです。
大規模なECサイトの構築時は、基幹システムや物流管理をはじめ、あらゆるシステムと連携する必要が生まれます。既存のプラットフォームをカスタマイズして対応すると、膨大な工数がかかるため、不具合が起きやすくなったり、最終的にフルスクラッチと同等のコストがかかったりする恐れもあります。

開発に時間・コストをかけられる場合

ECサイトの構築を早い段階から計画しており、ローンチまでに時間的な余裕がある場合、フルスクラッチも選択肢に入ります。フルスクラッチは開発に半年から1年ほどかかるため、運用開始時期が迫っている事業者には向いていません。
また、十分な予算を用意できない場合も同様です。初期費用1,000万円からが目安となっていますが、開発規模によっては数千万円から数億円ほどになるケースもあります。

フルスクラッチ開発をスムーズに進めるポイント

フルスクラッチ開発をスムーズに進めるポイント
フルスクラッチ開発をスムーズに進めるうえでは要件定義が重要です。要件定義とは、開発前にデザインや機能を固める段階です。要件定義の内容をもとに仕様書を作成しますが、仕様書の時点で運営サイドと制作サイドが同じ完成図を描いている必要があります。具体的にイメージできなければ、何度でもすりあわせをおこなうべきです。

大手企業のECサイトはなぜフルスクラッチ開発なのか

大手企業のECサイトはなぜフルスクラッチ開発なのか
大手企業のECサイトはフルスクラッチで制作されるケースが多いです。フルスクラッチが選ばれる背景にはさまざまな事情がありますが、主な理由は要件の多さや内製化です。
まず、要件が多くなると構築方法が限られます。大企業のECサイトの多くがクラウドECやフルスクラッチでないと対応できない案件です。
また、内製化するためにフルスクラッチを選ぶ側面もあります。ブラックボックス化を避けるためです。たとえば、クラウドサービスや一部のパッケージはソースコードを社内で管理できません。ソースコードを管理するにはフルスクラッチが有力候補となります。

社内開発のシステムは離職者が出るとブラックボックス化しやすい

社内開発のシステムは離職者が出るとブラックボックス化しやすい
システムをインハウスで開発するとソースコードを管理できるうえ、スピード感をもって運営できますが、社内開発のシステムには弱みもあります。離職者が出るとブラックボックス化しやすい点です。アウトソーシングの場合、設計や仕様はドキュメントによって管理されます。
一方、内製化してしまうと、開発や運用にあたってスピードや効率が重視された結果、ドキュメントが整備されないまま放置されるケースも少なくありません。さらに、担当者の退職や異動があればブラックボックス化していく恐れもあります。

フルスクラッチのECシステムは数年でシステムが古くなる

フルスクラッチのECシステムは数年でシステムが古くなる
フルスクラッチやパッケージは開発したシステムを自社で所有します。サービスの運営会社がいるわけではないため、開発後は自社でアップデートしていかなければいけません。アップデートをしないまま運用を続けると、システムの老朽化にともなって以下のような問題が発生しやすくなります。

  • ・セキュリティの弱体化
  • ・新たなサービスや法令への対応遅れ
  • ・ソフトウェアの保守切れ

システム改修の頻度の目安は3~5年ほどです。とくにECサイトの場合はセキュリティ面のぜい弱性から重大なリスクにつながりやすいため、定期的にアップデートしていく必要があります。

クラウドECを利用することで常に最新性を担保できる

クラウドECを利用することで常に最新性を担保できる
老朽化したシステムは、アップデートによって新たなシステムに生まれ変わりますが、永久に利用できるわけではありません。アップデートはあくまでも対処療法であって、システム自体が新しくなるわけではないため、やがて処理がかさんでパフォーマンスの悪化につながります。
システムの最新性を重視する事業者にはクラウドECがおすすめです。クラウドECは、クラウド上のプログラムをベースに、個々のカスタマイズを加える開発方法です。クラウド上のプログラムをベースとしているため、アップデートによってつねに最新のバージョンを利用できる他、フルスクラッチに近いカスタマイズも可能です。

GMOクラウドECはフルオーダーによる構築へと対応した最新のECプラットフォームです。ヘッドレスコマースの採用により、自由なシステムの構築が可能となっています。その為、パッケージでは対応しきれない要件へもお応えする事が可能です。そしてEC本体のシステムとセキュリティは自動でアップデートされる為、フルスクラッチ構築の課題であるシステムの老朽化・陳腐化といった問題も解決しています。

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まとめ

まとめ
フルスクラッチは、ゼロからシステムを開発する方法です。デザインや機能をフルオーダーメイドでカスタマイズできますが、開発には膨大なコストや時間がかかります。しかし、独自の要件が多く、ソースコードも含めたインハウス管理を主とする大企業の案件では、採用されていることが多いです。
一方、フルスクラッチにはシステムが陳腐化しやすいデメリットもあります。新たな決済手段への対応をはじめ、トレンドへの対応が求められるECサイト開発においては、クラウドECも含めて検討してみるとよいでしょう。