- 最終更新日: 2025.03.21
- 公開日:2022.02.10
ヘッドレスコマースとは?従来のECとの違いからメリット、企業の事例まで徹底解説

近年では、ネットショッピング体験を実現するうえで、ヘッドレスコマースというECサイトの仕組みに注目が集まっています。ヘッドレスコマースを導入することで、多くのユーザーニーズに対応したシステムの構築が可能になります。今回はヘッドレスコマースとはなにか?そのメリットやデメリット、企業の事例などをご紹介します。
目次
ヘッドレスコマースとは
ヘッドレスコマースとは、フロントエンドとバックエンドを分離させたECサイトです。フロントエンドはユーザーとの接点となるUI、バックエンドはバックオフィスの管理用システムを指します。
従来型のECとの違い
ヘッドレスコマースに対して、従来型のECはモノリシックとも呼ばれます。プラットフォームの中にUIや管理システム、データベースなどをすべて含んでいます。
モノリシックの場合、フロントエンドに変更を加えると、バックエンドにも影響が出るケースがほとんどです。それぞれのシステムが同一のプラットフォームを基盤に動作しているため、片方のみを修正したり、乗り換えたりすることは難しくなります。
一方、ヘッドレスコマースではフロントエンドとバックエンドの分離によって、さまざまな変化に対して柔軟に対応できます。
ヘッドレスコマースが注目される理由
近年、ヘッドレスコマースが大手EC企業を中心に注目されています。背景にはさまざまな要因がありますが、主な理由はデバイスやアクセスの多様化、オムニチャネルの普及です。
以下では、それぞれのポイントについて解説します。
デバイスやアクセス手段の多様化
ECが生まれた当時、ECサイトにアクセスするのはPCユーザーのみでした。しかし、近年ではテクノロジーの発達にともなって、デバイスやアクセス手段の多様化が進んでいます。スマートフォンからSNSを経由したり、スマートウォッチから音声アプリを経由したりと、あらゆるチャネルに対応することが必要です。
オムニチャネルやOMOの普及
近年では、消費行動の多様化にともなって、オムニチャネルやOMOが普及しています。オムニチャネルやOMOは、複数のチャネルをリンクさせて一貫したマーケティングを実施する手法です。チャネルのオンライン、オフラインを問わず、シームレスな顧客体験を提供できます。
それぞれのチャネルをリンクさせるうえで、ヘッドレスコマースの導入は好都合です。ヘッドレスコマースは、同一のバックエンドで一元管理しつつ、フロントエンドを柔軟に変化させていくのに適しています。
ヘッドレスコマースのメリット
ヘッドレスコマースは次世代のECスタイルとして注目されています。顧客の購買行動に適応しやすい点が主なメリットです。
以下では、ヘッドレスコマースのメリットについて解説します。
スピーディーな開発や変更ができる
ヘッドレスコマースは、フロントエンドとバックエンドが完全に分離しています。そのため、開発や変更の際にはそれぞれ独立して作業可能です。
一つのプラットフォーム上にフロントエンドとバックエンドが乗っている場合、開発や変更は順序にのっとって進めなければいけません。フロントエンドとバックエンドも足並みをそろえる必要があるため、片方を待つ状況が生まれやすくなります。一方、ヘッドレスコマースであれば、よりスピーディーに開発や変更ができます。
システムの自由度が高い
ヘッドレスコマースは、カスタマイズの自由度が高い点もメリットです。UIやデザインを自由にカスタマイズできるため、システム設計において制約が少なくなります。
また、ヘッドレスコマースでは、フロントエンドとバックエンドをAPIによって連携させます。従来型のECでは、UIを変更するにもバックエンドが対応しているものを選ぶ必要がありました。しかし、ヘッドレスコマースであれば、顧客のニーズやトレンドに応じて自由にシステムを実装できます。
OMOやオムニチャネルに適している
ヘッドレスコマースは、バックエンドのシステムやデータを一元管理しつつ、さまざまなフロントエンドにリンクさせます。そのため、OMOやオムニチャネルに適しています。
OMOやオムニチャネルにおいては、オンライン・オフライン間でのデータ共有、バックエンド情報の一元管理が必須です。ヘッドレスコマースは、さまざまなチャネルをシームレスに管理するうえで、好都合な設計といえるでしょう。
顧客体験を向上させられる
OMOやオムニチャネルへの対応は、顧客体験の向上において効果的です。OMOやオムニチャネルでは、社内のデータ共有や管理がラクになるだけではなく、顧客に対して一貫したサービスを提供できます。
一般的には、チャネルが増えると、チャネルごとに提供するサービスの一貫性は失われやすくなります。しかし、OMOやオムニチャネルは各チャネルの密な連携によって、顧客との接し方を統一できる点が強みです。どのチャネルにおいてもサービスの質を維持できるため、ブランディングにも役立つでしょう。
ヘッドレスコマースのデメリット
ヘッドレスコマースは、企業側と顧客側のいずれにもメリットがありますが、当然デメリットもあります。とくに、構築に時間や費用がかかる点やAPIの知識が求められる点は、導入や運用の際にボトルネックとなりやすいため、かならずチェックしておかなければいけません。
以下では、ヘッドレスコマースのデメリットについて解説します。
構築に時間や費用がかかる
ヘッドレスコマースのメリットとして、スピーディーに開発や変更ができる点をあげていますが、従来型のECから乗り換える際には時間や費用がかかります。モノリシック構造からヘッドレスコマースに変更するには、バックエンドの仕組みを大幅に変える必要があるためです。
また、フロントエンドとバックエンドを切り分けて開発できる一方、従来型ECに比べてシステムの複雑性は増しています。
APIなどの専門知識が必要
ヘッドレスコマースにおいてAPIの利用は必須要件です。フロントエンドとバックエンドでまったく異なるシステムをリンクさせられるのは、APIによって情報を通信できる仕組みが整えられているためです。
しかし、APIによるシステム連携は容易ではありません。インフラやエンジニアをはじめ、専門的な知識をもったメンバーの力が必要です。社内でリソースを確保できない場合、外部のベンダーに依頼しなければならず、インハウスでの運用が難しくなってしまう点もデメリットです。
ヘッドレスコマースの事例
ヘッドレスコマースは、オンラインでユニークな顧客体験を追求する企業を中心に、業種を問わず導入されています。まだ事例の数は多くありませんが、その分陳腐化しておらず、競合他社と差別化を図りやすい点は強みです。
以下では、ヘッドレスコマースの事例について紹介します。
※GMOクラウドECの事例ではございません。
コアラマットレス
https://koala.com/ja-jp
コアラマットレスは、オーストラリアの寝具メーカーです。Shopifyのエンタープライズ版である「Shopify Plus」をフロントエンドに採用したヘッドレスコマースを導入しています。EC機能だけでなく、CMSや決済機能、在庫管理システムや分析ツールなど、あらゆるシステムとリンクさせています。
OUTFITTER
https://www.outfitter.jp/
OUTFITTERは、イオングループが運営するユニフォームメーカーです。注文時にオンラインでデザインをカスタマイズできるほか、スポンサー企業のロゴを入れてディスカウントを受けられるサービスが話題となっています。
Web上でデザインを反映していく作業は、UIや操作性の面でハードルが高く、ユーザビリティを高めるためにヘッドレスコマースを導入しています。
Burrow
https://uncrate.com/
Burrowは、アメリカの家具メーカーです。組み立てやすさを重視した、モジュール式の家具が特徴的です。
また、記事サンプルの配達やコンサルティングなどのサービスも提供しています。さまざまなサービスを提供するうえでヘッドレスコマースは非常に有効です。
Zwift
https://www.zwift.com/ja
Zwiftは、アメリカのトレーニングアプリメーカーです。インドアサイクリングに力を入れており、仮想現実の世界でサイクリングを楽しめる点がユニークです。
2014年のリリース以降、アプリの成長とともにチャネルの多様化に対応するうえでヘッドレスコマースが役立っています。ヘッドレスコマースは、ブランド成長期におけるユーザーとの関係性構築にも効果的です。
Carluccio
https://www.carluccios.com/
Carluccioは、イギリスで人気のイタリアンレストランです。オンラインでもサービスを提供したいと考えて、ヘッドレスコマースを導入しました。Web上でも店舗と同じような顧客体験を実現しています。
ヘッドレスコマースでは、コンテンツとコマースを組み合わせて新たなUXを提供することが可能です。
ヘッドレスコマースに対応できるプラットフォーム
ヘッドレスコマースの導入を検討している場合、ヘッドレスに対応できるプラットフォームを選ぶ必要があります。将来的な予定の場合であっても、はじめからヘッドレスに対応できるプラットフォームを利用しておくのがおすすめです。
以下では、ヘッドレスコマースに対応できるプラットフォームについて紹介します。
※GMOクラウドECの事例ではございません。
Shopify
https://www.shopify.jp/
Shopifyは、ヘッドレスの要件を満たすカートASPです。世界的に利用されており、Webや書籍などの情報も豊富です。そのため、EC制作に慣れていないエンジニアでも構築しやすいでしょう。
しかし、ヘッドレスコマースに特化したシステムではなく、開発時には知識や工夫が求められる場面もあります。
EC-ORANGE
https://ec-orange.jp/
EC-ORANGEは、EC-CUBEをベースに開発されたパッケージです。EC-ORANGEは、フロントエンドとバックエンドをAPIで連携するシステムを前提としています。まさにヘッドレスコマースに適した設計のプラットフォームです。
また、新たにAPIを開発してカスタマイズすることも可能です。そのため、あらゆるシステムと連携ができるでしょう。
SI Web Shopping
https://products.sint.co.jp/siws
SI Web Shoppingは、ECサイトを構築するためのパッケージです。モノリシックとヘッドレスコマースのどちらにも対応できるプラットフォームです。ニーズに応じて、標準のフロントシステム、外部のフロントシステムを使い分けられるため、さまざまなビジネスモデルに適しています。
まとめ
ヘッドレスコマースは、フロントエンドとバックエンドの分離によって、カスタマイズの自由度を高めたECシステムです。従来型のモノリシックに比べて、顧客体験を意識した設計をしやすいほか、OMOやオムニチャネルへの対応力にも長けています。
激しく移り変わるEC業界のトレンドに対応していくうえで、ヘッドレスコマースの導入は大きなアドバンテージとなるでしょう。