• 最終更新日: 2023.01.27
  • 公開日:2023.01.27

LTV(ライフタイムバリュー)とは?計算方法や最大化のコツ、CRMとの関係を解説

LTV(ライフタイムバリュー)とは?計算方法や最大化のコツ、CRMとの関係を解説
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LTV(ライフタイムバリュー)とは?

LTV(ライフタイムバリュー:顧客生涯価値)は、1人もしくは1社の顧客が特定の企業との取引開始から終了までの期間にもたらす利益のことです。

「生涯」という言葉がつくものの、生まれてから死ぬまでの消費金額ではなく、あくまでも1つの企業に支払った金額から算出したものを指します。また、LTVは基本的に継続利用(リピート)を前提として考えられるため、結婚指輪や住宅のような生涯に1度だけ購入する商品やサービスは含まれません。

一般的に商品やサービス、企業に対してのロイヤリティ(愛着や信頼)がある顧客ほどリピートにつながりやすいとされ、たとえ1回の利用額が少ない場合でも利用回数が多い場合は「LTVが高い」といえます。

LTVが重要視される背景

利益拡大のためにLTV向上に取り組む企業が増えている背景には、時代の変化が関係しています。

ここでは、なぜ今LTVが重要視されるのか?その背景について詳しく紹介します。

新規顧客の獲得が難しくなっている

広告コストの上昇や価格競争、そして市場の成熟などのさまざまな理由から、新規顧客の獲得が以前より難しくなっています。そもそも新規顧客の獲得には既存顧客の5倍のコストがかかるといわれており(1:5の法則)、多くの労力や時間を費やさなければなりません。

そこで、既存顧客との関係性を見直し、中長期的な商品購入やサービスの利用に重きをおくマーケティング手法が重視されるようになりました。LTVは既存顧客との関係性を見直すために必要な数値が可視化できるため、多くの企業の注目を集めています。

「モノ」消費から「コト」消費への変化

これまでは、商品を所有することに価値を見出す「モノ」消費の傾向にありました。しかし多くのモノであふれかえっている今、アクティビティやアトラクション、イベント、コミュニティなどによる体験に価値を見出す「コト」消費へと市場ニーズが変化しつつあります。

さらに、サービスの利用権利に対して料金を支払うサブスクリプションの普及により、新たなコト消費のマーケティング戦略としてLTV分析を取り入れる企業が増えています。

マスマーケティングからOne to Oneマーケティングへの移行

不特定多数の消費者へのマスマーケティングではなく、個々の購買傾向からニーズを読み取り、最適なコミュニケーションをおこなうOne to Oneマーケティングへの移行も、LTVが重要視される背景の1つです。One to Oneマーケティングは、消費者ごとにカスタマイズしたアプローチをおこなうためニーズを満たしやすく、顧客ロイヤリティを高められるというメリットがあります。

さらに、顧客データの収集や分析、サービス改善に役立てられるCRM(顧客関係管理)や、MA(マーケティングオートメーション)などのITツールの発展も、LTVの測定が容易になった理由といえるでしょう。

LTVの計算方法

LTVにはさまざまな計算方法があり、なおかつ商品やサービスごとに必要な要素が変わるため、自社ビジネスにマッチする計算式を選ぶ必要があります。
ここでは、メーカー・小売業とサブスクリプションの2つにわけてLTVの計算方法を紹介します。

メーカー・小売業の場合

メーカー・小売業の場合、売上金額を基本とした「顧客の平均購入単価×平均購入回数」が代表的な計算方法として用いられています。毎月もしくは数ヶ月単位でリピートする商材の場合であれば「平均購入単価×購入頻度(回)×継続購入期間(年)」という計算式がシンプルでわかりやすいでしょう。

たとえば、 2年間毎月3,000円のスキンケア商品を購入している顧客の場合、計算式は「3,000円×12回×2年=72,000円」で、LTVは72,000円となります。

また、コストを考慮する場合は、「平均単価×購入頻度×継続購入期間−(新規顧客獲得費用+顧客維持費用)」で算出できます。

サブスクリプション型の場合

サブスクリプション型の場合は「解約」という要素が入るため、チャーンレート(解約率)を使ってLTVを算出します。

チャーンレートは「解約した顧客数÷総顧客数」で求められ、LTVの計算式は「ARPU(ユーザー平均単価)×チャーンレート」となります。また、ARPUは売上÷ユーザー数で算出します。

LTVを最大化させるマーケティング施策

LTVを最大化するには、計算式に含まれる一つひとつの要素を改善していかなければなりません。ここでは、LTVを最大化する具体的な方法として、5つのマーケティング施策を紹介します。

購入単価を上げる

自社商品の価格を見直し、単価が上げられそうなものがないかを確認してみましょう。ただし、「安さ」を売りにしている商品の場合は、単価を上げることで顧客が離れてしまう可能性があるため注意しなければなりません。顧客離れを防ぐためにも、値上げに対しての付加価値の説明や先行者利益の付与、ラインナップの追加など、顧客を納得させる対策を考えておきましょう。

また、上位モデルの購入を提案する「アップセル」や、関連商品の購入を提案する「クロスセル」を促進することでも、1人あたりの購入単価を上げられます。

購入頻度を上げる

同じ商品の購入頻度を上げることも、LTV向上につながります。いくらよい商品やサービスを提供していても、顧客が忘れてしまってはリピート購入につながりません。自社商品やサービスのことを定期的に思い出してもらうためには、顧客とのコミュニケーションを増やす必要があります。

購入頻度を上げるための施策には、

  • ・買い替え時期にあわせたリマインドメール
  • ・バースデーメール
  • ・SNSで新商品をPR
  • ・しばらく来店していない顧客へのDM

などがあり、こまめなフォローや接触機会を増やすことで効果を発揮します。

顧客維持率を上げる

顧客維持率は、顧客の定着率を示す指標で、「リテーションレート」とも呼ばれています。基本的に消費者は満足している商品やサービスがあれば、「このまま使い続けたい」と考える傾向にあり、のちほど紹介する顧客ロイヤリティとも深い関わりをもちます。

顧客維持率を上げるためには顧客が競合他社へ流れていかないよう、継続利用につながるサービスの提供やプロモーションをおこないましょう。以下に顧客維持率を上げる施策の一例をあげておきますので、取り入れられるものがあれば検討してみてください。

  • ・クーポンの発行
  • ・継続特典・会員特典の付与
  • ・高品質なカスタマーサービス

顧客獲得・維持コストを下げる

近年注目を集める「SFA(セールスフォースオートメーション)」や、「CRM(カスタマーリレーションシップマネジメント)」などのツールを導入し、顧客獲得や維持コストを下げることでLTV向上が目指せます。SFAは、営業活動に関する情報全般をデータ化し、分析できる管理システムで、CRMはデータから顧客の購買行動などが分析できる管理システムです。

このようなITツールを利用することで人的リソースのムダをはぶき、コスト削減にもつなげられるでしょう。

顧客ロイヤリティを高める

顧客ロイヤリティを高めるには消費者の期待を上回るサービスの提供が必要であり、段階的に「ファン化」へと成長をうながす工夫が必要になります。顧客が商品やサービス、ブランドにもつ愛着が強ければ強いほど、長期的かつ高頻度での購買行動につながり、LTV向上が目指せるでしょう。

また、ロイヤリティの高い顧客のなかには、お気に入りの商品やサービスを友人や知人に紹介したり、SNSに投稿したりする人もめずらしくなく、消費者発信での集客にも期待できます。

LTVの使い方と活用場面

ここまでLTVの計算方法や施策について紹介してきましたが、使い方がわからなければ意味がありません。LTVを最大化するためにも、これから紹介する使い方や活用場面を参考に、自社のマーケティング戦略に取り入れてみてください。

CPA(顧客獲得単価)の適切な上限設定

CPA(顧客獲得単価)とは、顧客の獲得やコンバージョンなどの成果に対して、広告やキャンペーンにかかった費用をあらわす指標のことです。計算式は「顧客獲得にかかった費用÷新規顧客数」で求められ、一般的には金額が低いほど成果が高いと考えられますが、中長期的に利益をだすためには高いCPAの許容は避けられません。

LTVを加味することでCPAの上限が適切に設定でき、「1回目の購入では赤字だが、2回目の購入で黒字になる」などの利益回収の予測が容易になります。

CAC(顧客獲得コスト)の適切な設定

CPAと似た言葉に、CAC(顧客獲得コスト)というものがあります。CACの計算式は「顧客獲得コスト÷新規顧客獲得数」で、CPAは購入や初回お試し、会員登録、LINE登録などのアクション(Action)に対する指標、CACは顧客獲得のためにかかったすべての費用を含めて計算するという違いがあります。

LVT÷CACで算出される数値が3以上であれば、収益性があるビジネスと判断してよいでしょう。

各施策の評価、戦略策定

LTVは売上アップのためにおこなう施策それぞれの評価や、戦略策定にも活用できます。

たとえば、各顧客セグメントに対してLTVを算出し、出稿した広告やおこなったキャンペーンの効果を評価することで、「どのセグメントを重視して次のリソースを投下するか」などの戦略が立てやすくなります。

LTVを活用し、もっとも収益の上がりやすいセグメントに対しての施策を考えることで、効率よく収益の最大化につなげられるでしょう。

LTVの向上にはCRMを活用する

顧客管理システムであるCRMはLTVと親和性が高く、LTV向上に関わる要因の「顧客との良好な関係性構築」に有効です。これまで顧客管理業務は手動でおこなわれてきましたが、CRMを導入することでデータベースに顧客の名前や年齢・職業、さらに購入履歴や提案した商品の情報など、膨大な数の情報を蓄積・管理できるようになりました。

また、CRMにもさまざまな種類がありますが、どれも顧客と長期的な関係を築き、継続して自社商品やサービスの利用を促進させることが目的であることに変わりはありません。CRMを活用することで顧客ニーズの把握や適切なフォローのタイミングが正確に把握できるようになり、営業とマーケティングの足並みを揃えることが可能になります。

さらにCRMは潜在顧客や見込み客の選別やアプローチもできるため、新規顧客獲得にも役立ちます。

まとめ

新規顧客獲得へのハードルが上がり、さらにモノ消費からコト消費へ変化する今、利益につなげやすい既存顧客との関係性が以前より重要視されるようになりました。「購入単価が低い」や「既存顧客の継続率が悪い」など、企業によって抱える課題は異なりますが、LTVで数値を算出することによりマーケティング戦略に生かせます。

さらなる利益拡大のためにもCRMなどのITツールを活用し、顧客との関係性や現在投じているコストを見直し、LTV向上を目指しましょう。