- 最終更新日: 2021.03.19
- 公開日:2021.03.19
非対面受取が多様化 コロナ禍で需要急増の「ネットスーパー」最新事情
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新型コロナウイルスの感染拡大により、外出を控え、買い物は自宅からネット通販で済ませる「巣ごもり消費」が拡大しています。そのなかでも、スーパーなどで販売されている生鮮食品を自宅まで届けてくれる宅配サービス「ネットスーパー」の利用が急増しています。今回はコロナ禍で注目を集めるネットスーパーについて、最新動向などをまとめました。
目次
利便性の高さからネットスーパーの利用が拡大
ネットスーパーは元々、コロナ禍の前から、スーパーで販売されている肉や魚、野菜など生鮮食品や、加工食品・飲料・冷凍食品などが、朝ネットで注文すると夕方以降には届くことから、利便性が高く、利用者が拡大しているサービスでした。
忙しい主婦や、スーパーが遠いなどの理由で買物に行きづらかったり、重い荷物を持つことが困難だったりする高齢者などから人気を集め、市場が拡大していました。
コロナ禍初期にはネットスーパーに注文殺到
コロナ禍では、政府から1回目の緊急事態宣言が出される前、東京都で外出自粛要請が出された20年3月末ごろに、ネットスーパーに注文が殺到し、各種サービスで注文停止や遅配が起きました。
(株)ライフコーポレーションが運営する「ライフネットスーパー」は、首都圏の店舗で土日にあたる20年3月28日・29日の注文を停止。同3月30日から営業を再開したものの、注文点数を制限しました。楽天西友ネットスーパー(株)が運営する楽天ネットスーパーにもアクセスが殺到し、同時期に注文を停止しています。そのほか、イトーヨーカ堂のネットスーパー、イオンネットスーパー、マルエツネットスーパー、ダイエーネットスーパーなどにもアクセスが集中しました。
現在はこうした規制はなく、安定して商品を供給する状況が続いていますが、注文が殺到したコロナ初期の状況だけを見ても、「3密」を避けて買い物ができることなどから、コロナ禍でニーズが急増していたことがわかります。
3. ネットスーパー市場が拡大した背景は?
コロナ禍でニーズが急増するネットスーパーですが、話題になったのはごく最近で、Amazonの日本法人が2017年4月から、生鮮宅配「アマゾンフレッシュ」を開始した頃からです。その半年後に追いかけるように(株)セブン&アイ・ホールディングスとアスクル(株)が共同運営する「IYフレッシュ」がオープン(20年11月にサービス終了)し、18年10月にも楽天と西友が「楽天西友ネットスーパー」を開始しました。その間にも、大手小売企業だけでなく、地方でもさまざまなスーパーがネットスーパーのサービスを立ち上げています。
Amazonや楽天などがネットスーパーに相次いで参入した背景には、BtoCのEC市場規模が順調に拡大するなかで、食品や飲料のEC化率は2%台と低水準で成長の余地は大きい領域ともいわれていることがあります。
大手通販会社のノウハウとスーパーマーケット品質が融合
食品は生鮮食品や冷凍食品など品目ごとに違う温度帯での管理が必要で、日用品などと比べ、管理や物流コストが跳ね上がるほか、消費期限切れなどの在庫ロスも発生します。なので、生鮮食品や冷凍食品の通販サービスは、生協やオイシックスなどが提供する定期宅配の専門サービスに限られていました。
ネットスーパーが一般化したのは、Amazonや楽天、アスクルなど物流とECのノウハウを持つ通販大手とライフや西友、イトーヨーカ堂などが協業し、ネットスーパーの店舗の商品を消費者に届ける仕組みを作り上げたことが大きいと言えるでしょう。これらのサービスが見本となり、ローカルのスーパーもネットスーパー事業に参入するようになりました。
ネットスーパーNPS※1はライフネットスーパーが1位に
ネットスーパーの利用率や人気のサービスを見てみたいと思います。NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューションズ(株)が21年2月18日に発表した「NPSベンチマーク調査『ネットスーパー』」によると、顧客ロイヤリティを測る顧客満足度指標NPS1位は「ライフネットスーパー」でした。
同調査の対象は、Amazonフレッシュ、イオンネットスーパー、イトーヨーカドーネットスーパー、ライフネットスーパー、楽天西友ネットスーパーの5つサービスを対象としています。
ネットスーパーは「利便性・欠品の少なさ・配送時間・送料」がポイントに
ネットスーパーのサービス全体を通して、推奨度に大きな影響を与えるのは、「利便性」に加えて、「欠品の少なさ」「配送時間」「送料の適切さ」でした。ライフネットスーパーは、「欠品の少なさ」と「配送料の適切さ」がトップとなったほか、「利便性」や「価格面」でも評価が高く、NPSで1位になる要因となりました。
同調査によると、ネットスーパーを「以前よりお薦めしたいと思う」ユーザーは、全体の35.6%に及びました。また、その理由として「置き配、非対面式を選択できる」といった配達時の配慮への評価もありました。
コロナ禍の前との比較では、全体の38.1%が「購入金額が増加した(増えた+どちらかというと増えた)」と回答し、推奨者のグループでは54%が「増加した」と回答しています。
ライフコーポレーションは業績好調、上方修正額で1位に
NPSトップとなったライフネットスーパーを展開する(株)ライフコーポレーションは、Amazonフレッシュと連携し、Amazon内でネットスーパーを展開していますが、業績も好調です。
(株)東京商工リサ―チが20年9月に発表した上場企業の「新型コロナウイルスによる業績上方修正」調査によると、上場企業で業績の上方修正をした企業のうち、ライフコーポレーションが上方修正額のトップでした。増額の要因として同社は「不要不急の外出自粛、テレワークの推進、在宅学習などの動きが加速し、急激な巣ごもりや内食需要が喚起された」としています。
ネットスーパー利用経験者は2割
別の調査を見てみたいと思います。マイボイスコム(株)が20年11月に発表した「ネットスーパー」に関するインターネット調査によると、ネットスーパーの利用経験者は2割強で、現在利用している人は1割強でした。
このうち、「定期的に利用している」が3.2%、「不定期だが利用している」が7.9%。使っている理由(複数回答)は、「重いもの・かさばるものを届けてくれるため」が50.2%、「買い物時間を節約できるため」「外出したくないときに便利なため」「深夜・早朝など時間を気にせずに注文できるため」が2~3割となっていました。
ネットスーパーで重視する点は「品揃えの充実度・送料・価格」
利用時に重視する点(複数回答)については、「品揃えの充実度」が利用経験者の5割、「送料の安さ」「品質の良さ」「商品の価格」が4割前後、「配送の確実さ」「配送時間の正確さ」が各2割台で上位に。現在の利用者に、直近1年間の利用頻度を聞いたところ、「月に数回程度」「月に1回程度」「2~3ヶ月に1回程度」がボリュームゾーンで、月1回以上は6割強、週1回以上は2割弱でした。
現在も利用している人が直近1年間に利用したネットスーパー(複数回答)は、「イオンネットスーパー」が35.2%、「楽天西友ネットスーパー」「イトーヨーカドーのネットスーパー」が各3割弱でした。また、どのような時にネットスーパーのWebサイトを見るかを聞いたところ(複数回答)、「自宅で19~22時台」が40.1%と最多でした。
ネットスーパーの課題は「欠品・遅配・置き配への不安」など
フリーコメントでは、ネットスーパーの利用意向者からは「買い物をする時間がないので利用したい。夜中でも届けてくれるサービスが欲しい」(女性39歳)、「車の使用をやめたときは利用するつもり」。(女性69歳)、「ネットスーパー歴は長い。いまさら変えたくもない。時間が自由。買いすぎない。計画的に使える」(女性51歳)などの声がありました。
一方、利用したいと思わない人の意見は、「自分の口に入れるものは自分で選びたい。スーパーに行くことで社会の変化を知ることもできるので実際に出かけて買いたい。他の新発売のものなどを見ることができるので自分で行きたい」(女性64歳)、「コロナで利用者が急増して欠品が多く、配達も数日かかるので1回だけ使ってやめた」(女性66歳)、「配達時間に在宅が必要だし、置き配も心配なので面倒」(女性56歳)などでした。
これらの否定的な意見をみると、コロナ禍初期で欠品や遅延を体験してマイナスイメージを持ったり、配送が遅いことや非対面の置き配を心配したりする声が見られ、このあたりがネットスーパーの課題になっていると思われます。
ネットスーパー各社が課題を解決するサービスを開始
最近では、ネットスーパー各社が、こうした課題を解決するサービスを開始しています。特に非対面での受取方法が多様化している点が挙げられます。
楽天西友ネットスーパーでは、20年5月28日からそれまでは希望者のみに対応していた「非対面受け取り」をすべての注文の配送に適用しました。また、一部の店舗では、西友の店頭で商品を受け取れる「店舗でのお渡しサービス」を開始しています。
東京都足立区の保育園にテスト導入された宅配ロッカー「7&iロッカー」
冷凍・冷蔵・常温に対応した宅配ロッカーが誕生
(株)セブン&アイ・ホールディングスでは、20年3月5日から東京都内のセブンーイレブン2店舗で、冷蔵・冷凍・常温の3つの温度帯に対応した宅配ロッカー「受取りボックス」をテスト設置しています。
イトーヨーカドーネットスーパーで注文した商品を「受取りボックス」で受け取ることができます。さらに同社では同年6月から、同じように3つの温度帯に対応した宅配ロッカー「7&iロッカー」を東京都足立区の保育園でテスト設置しました。
イオンネットスーパーではドライブスルーでの受取も
イオンリテール(株)では、イオンネットスーパーで購入した商品をドライブスルー方式で受け取れるサービス「ドライブピックアップ!」、店舗のカウンターでレジに並ばずに受け取ることができる「カウンター ピックアップ!」、非接触型の「ロッカーピックアップ!」の3種類の店舗受取サービスを実施しています。これらの3つの受取サービスを「Pick Up!(ピックアップ!)」と呼び、本州(東北を除く)・四国のイオンとイオンスタイルのイオンネットスーパー対象店舗約180店舗で実施しています。
イオン東久留米店の「ドライブピックアップ!」
ローカルでもネットスーパー市場が拡大
埼玉県を中心にスーパーマーケット「ヤオコー」を展開する(株)ヤオコーは、「ヤオコーネットスーパー」で購入した商品を店頭で受け取れるサービスを実施。「ヤオコーネットスーパー」は埼玉県の8店舗で展開しています。
同社では、「子育てで忙しい」「昼間は働いている」「重い荷物を運んでほしい」など、日ごろ買い物を楽しむ十分な時間を持てないユーザーにも、「ヤオコーのおいしさ」をもっと身近に、もっと便利に楽しんでほしいという想いからサービスを開始。妊娠中や乳幼児がいて忙しいユーザー向けの商品を充実させるなど、自宅でも買い物を楽しんでもらえる工夫をしています。店舗受取サービスもその一環です。
このようにローカルのスーパーマーケットでもネットスーパーを開始する店舗が増えていますが、まだ利用できる地域はそれほど多くはありません。
Amazonはネットスーパーサービスを東海地方に展開
アマゾンジャパン(合)は9日、「スーパーマーケットバロー」を東海・甲信越・北陸・近畿地方を中心に展開する(株)バローホールディングスとの協業し、Amazonプライム会員向けサービスとして、東海地方を中心にバローの実店舗で取り扱う生鮮食品のネットスーパーを、今夏をめどに開始すると発表しました。ライフと同様、最短2時間配送サービスも実施するとのことです。
この協業によって、東海地方を中心にネットスーパーの利用者が拡大しそうです。
ネットスーパーは非対面で商品を受け取ることができる「新型コロナ対策」、高齢化社会を背景とした買い物が困難な「買い物弱者」の支援、働き方改革の面では共働き世帯の支援など、さまざまな社会課題を解決するサービスとなっています。
withコロナ時代はまだ当分続く傾向にあり、生鮮食品が自宅まで届けてくれて、かつ非対面で商品を受け取ることができるネットスーパーの需要は今後も拡大しそうです。