- 最終更新日: 2022.08.31
- 公開日:2022.08.31
実店舗がなくなる時代は来る?ECとの役割の違いや使い分け、強みを生かす連携方法まで
- BtoC
- EC
- オムニチャネル
- お役立ち情報
- 用語・知識
目次
まだまだ実店舗が優勢の現状
近年では、スマートフォンの普及や、新型コロナウイルスの拡大によってオンラインサービスが発展しています。インターネット上で商品を購入するECも例にもれず、大幅にシェアを伸ばしているのが現状です。
一方、株式会社ネオマーケティングの2021年9月の調査によると、あらゆるジャンルの商品においてECよりも実店舗を利用しているとの結果が出ています。「本・CD・DVD」や「ゲーム・ホビー」では、EC派と実店舗派がほぼ同数となっているものの、全体としては実店舗がまだまだ優勢であるといえるでしょう。
以下では、同調査をもとに、実店舗とECの現状について解説します。
実店舗で購入する理由
「主に実店舗で購入する」と回答した人について、実店舗で購入する理由を調査したところ、以下のような理由が多くを占めていました。
- 陳列棚にある商品全体を見たいから
- その商品を生で見て決めたいから
- すぐに手に入れたいから
やはり実際の商品を見られる点は、実店舗の強みです。とくに「衣類・ファッション小物」については56.8%の人が「その商品を生で見て決めたいから」と回答しています。
オンラインで購入する理由
「主にオンラインで購入する」と回答した人について、オンラインで購入する理由を調査したところ、以下のような理由が多くを占めていました。
- 欲しいものが実店舗にないから
- ゆっくり選びたいから
- 実店舗より安いから
調査結果によると、品揃えや安さを理由にオンラインで購入する方が多いようです。上記のほかに「実店舗の接客を受けたくないから」と回答している人も一定数おり、誰にも邪魔されずにゆっくり商品を選ぶことに対するニーズも根強いとわかります。
実店舗とオンラインの使い分け方
「実店舗とオンラインショップ半々」と回答した人について、実店舗とオンラインの使い分け方を調査したところ、以下のような理由が多くを占めていました。
- 安いかどうか
- すぐ必要かどうか
あらゆるジャンルにおいて「価格」を基準とする人がもっとも多く、続いて「緊急性」で判断する結果となりました。ECには全国のショップから安いものを探せる強みがある一方、商品が届くまでの時間を気にする消費者も多く、いまだ実店舗が優勢となっていると考えられます。
引用:生活者起点のリサーチ&マーケティング支援を行なうネオマーケティングが実施した調査結果
https://neo-m.jp/investigation/3227/
実店舗とEC(オンライン)の違い
実店舗とECは、商品を販売する点においては共通していますが、それぞれまったく異なる販売方法です。どちらの販売方法を採用するとしても、特徴や違いを活かせないと売上をあげるのは難しいでしょう。
以下では、実店舗とECの違いについて解説します。
来店動機
実店舗の場合、多くの顧客が店舗の雰囲気や外観を見て来店します。直感的に興味をもった店舗を訪れるケースが多く、店舗のコンセプトやターゲットに合わせた店舗づくりがポイントです。
一方、ECの場合は目的の商品ありきで来店する顧客がほとんどです。検索を利用して流入する特性上、商品名で検索した顧客が来店しやすくなります。
場所・営業時間
実店舗の場合、顧客が商品を購入できる場所や時間は、店舗に依存します。店舗の営業時間内、立地によって、機会損失につながる可能性は高くなります。
一方、ECの場合は特定の場所や時間に縛られません。基本的には、世界中の顧客がいつでも商品を購入できます。
店舗費用
実店舗の場合、店舗を構える必要があるため、地代家賃がかかります。契約時の保証金や礼金、毎月の家賃、店舗の内装・外装費のほか、人件費や水光熱費を含めると、店舗の運営にかかる費用だけでも高コストです。
一方、ECの場合は、店舗の出店や維持にかかる費用を大幅に抑えられます。ECサイトの規模にもよりますが、初期費用・月額費用をほとんどかけずに運営することも可能です。
購入行動
実店舗の場合、顧客は実際に商品を手にとったり、試したりして購入を決めます。さらに、悩んでいる顧客に対しては、スタッフが声をかけて購入を後押しできるため、購入を促しやすい点が特徴です。
一方、ECの場合は商品画像やレビューを参考に購入を決定するしかありません。そのため、商品の画像、寸法、レビューなどの情報は充実させておくことが重要です。
集客
実店舗の場合、商圏は店舗の周辺地域に限られます。そのため、地域でターゲティングして取り組める集客施策がおすすめです。たとえば、地域の刊行物、ポスティングなどの方法があげられます。
一方、ECの場合はリスティング広告やSNS広告などのオンライン広告が中心です。ターゲットのユーザー属性を分析したうえで、予算や特性に合わせた手法を検討するのがポイントです。
接客
実店舗の場合、対面で接客できる点が強みです。顧客の悩みや疑問を引き出しやすいだけでなく、顧客のロイヤリティを高められます。
一方、ECの場合は直接接客することができず、顧客の離脱につながりやすいといえます。また、問い合わせ方法がわかりにくいと、顧客にストレスを与える原因にもなりかねません。チャットや問い合わせのサービスを充実させることがポイントです。
決済
実店舗の場合、キャッシュレス決済の利用率が増えているものの、現金による決済が中心です。中国をはじめ、キャッシュレス先進国においては、キャッシュレスのみの店舗も多く登場していますが、日本では現金を利用できない店舗はそれほど多くありません。
一方、ECの場合は基本的にキャッシュレス決済が中心です。代金引換、コンビニ支払い、銀行振込などを利用すると現金でも決済できますが、ほとんどの顧客はクレジットカードやコード決済を利用するでしょう。
配送
実店舗の場合、基本的には店舗で商品を受け渡すケースがほとんどです。一部の大型商品を除いて配送サービスはあまり必要ありません。
ただし、近年ではオムニチャネルの一環として、実店舗で購入した商品の自宅配送に対応する店舗が増えているため、実店舗とECを併用している場合は導入を検討するのもよいでしょう。
一方、ECの場合は配送が必須です。配送料は顧客にとって商品の購入を左右する要素であるうえ、安易に無料にしてしまうと利益を圧迫するため、適切なラインで設定すべきです。
信用
実店舗の場合、店舗としての実態があり、店員と対面して商品を購入できることから安心感を与えやすいビジネスモデルです。利用したことのない店舗でも、来店時に多くの顧客が利用していれば、品質の面でも信用を得ていると考えられます。
一方、ECの場合は実店舗に比べると、信用が得られにくい面があります。とくに会社概要やプライバシーポリシー、返品やキャンセルへの対応などを記載していないと、不安に感じる顧客が多いでしょう。誠意をもって運営していることが伝わるようなサイトづくりが大切です。
実店舗とECのメリット・デメリット
前述のとおり、実店舗とECはまったく異なる販売方法です。そのため、それぞれ独自のメリット・デメリットがあります。どちらの販売方法にするか、どう使い分けるかを考えるうえで両者のメリット・デメリットを理解することは非常に重要です。
以下では、実店舗とECのメリットとデメリットについて解説します。
実店舗のメリット
実店舗には、以下のようなメリットがあります。
- 実際の商品を手に取って見られる
- 対面してコミュニケーションができる
商品を手に取って見てもらえる
実際に商品を手に取れる点は、店舗側と顧客側の双方にとってメリットです。店舗は商品の魅力を伝えやすく、顧客は商品の色味やサイズ、質感などを明確に把握できます。とくに衣料品の場合は試着してから購入できるため、安心感があります。
対面の接客でコミュニケーションできる
実店舗では対面して接客できるため、顧客の購入を後押しできます。購入を悩んでいる理由、不安をヒアリングしたうえで解消できれば、購入につながる可能性を高められます。
また、顧客のニーズを引き出しやすい点も対面ならではの強みです。接客を通してそれぞれの商品について、どんな顧客層からどれくらい人気があるのかを理解できるため、顧客へのおすすめや商品の企画に役立ちます。
実店舗のデメリット
実店舗には、以下のようなデメリットがあります。
- 場所によっては集客が難しい
- コストがかかる
立地など場所によって集客が難しい
実店舗の商圏となるのは、基本的に店舗から限られた範囲内に生活圏がある顧客のみです。店舗の近くに家や学校、会社などがある人が顧客となります。そのため、店舗周辺を生活圏とする人が少ない場合、集客の難易度は格段に上がります。
店舗費用などコストがかかる
実店舗の運営には、家賃や水光熱費、人件費などのコストがかかります。立地や広さによって差はありますが、都市部の場合には固定費だけで月あたりのコストが数百万円にのぼるケースも少なくありません。
ECのメリット
ECには、以下のようなメリットがあります。
- 場所や時間に縛られない
- コストを抑えられる
- デジタルの機能性
場所・時間の制約が無い
ECでは、いつでもどこでも商品を購入できます。営業時間や立地によって機会損失を生むおそれがない点は、ECならではの強みです。一方、在庫が切れてしまうと購入できなくなってしまうため、適切な在庫量の維持には注意が必要です。
低コストで始められる
近年では、無料でECサイトを構築できるカートASPが数多く登場しており、PCさえあればコストゼロでECを始めることも可能です。小規模ECサイトであればほとんど初期投資が必要ないため、スモールスタートに適したビジネスモデルといえます。
なお、ECの運営にかかるコストは、小規模サイトなら販売手数料のみ、一定以上の規模のサイトなら月額数万円から数十万円ほどです。
デジタルでしかできない機能の実現
オンラインプラットフォームとしての特徴を活かして、デジタルならではの機能を利用できるのもECのメリットです。たとえば、ECでは顧客や購買に関するデータを自動的に収集して分析できます。
ECのデメリット
ECには、以下のようなデメリットがあります。
- 実際の商品を見られない
- 集客が難しい
- 知識やノウハウが必要
実際の商品を見てもらえない
ECでは、購入前に実際の商品を見られません。そのため、商品画像や寸法、レビューなどの情報を充実させて、実際の商品と購入前のイメージに乖離が生まれないよう工夫することが大切です。
また、自宅で試着できるサービスや購入後のサイズ変更ができるサービスを提供するのも一つの手です。
集客が難しい
ECは、実店舗に比べて集客が難しいといわれています。立地や場所の制約を受けない分、ターゲットとなる顧客の絶対数は増えるものの、オンライン上のコンテンツに流入させるのは簡単ではありません。Web広告やSNSなどをうまく活用する必要があるでしょう。
最低限の知識が無いと軌道に乗るまで時間がかかる
前述のとおり、ECの集客にはマーケティングの知識が必須です。そのほかにもサイト設計、業務フローの構築をはじめ、ECならではのノウハウが必要とされるため、知識やノウハウがない状態だと軌道に乗るまでに時間がかかります。はじめてECに挑戦する際は、EC運営に知見をもった社員やアドバイザーを採用するのがおすすめです。
実店舗とECの強みを融合させるオムニチャネル化
近年、実店舗とECを併用する企業が増えています。それぞれ大きく異なる販売方法ではありますが、互いに補完しあって新たな顧客体験を生み出そうとする考え方です。
以下では、オムニチャネルの概要やメリットについて解説します。
オムニチャネルについてはこちらの記事でも詳しく解説しております。
オムニチャネルについて
オムニチャネルとは、あらゆるチャネルを統合して顧客体験の質を高める施策です。実店舗、ECサイト、SNS、アプリとチャネルが多様化する中、各チャネルにおいて一貫した顧客体験を実現することを目指します。
オムニチャネルのメリット
オムニチャネルには、以下のようなメリットがあります。
- 会員情報の一元管理
- 在庫の一元管理
会員情報の一元管理
チャネルごとに会員情報を管理していると、すでに実店舗で購入した商品をECサイトでレコメンドしたり、実店舗とECサイトでポイントを連携できなかったりする可能性があります。いずれも顧客体験を損なう原因になりかねません。
一方、オムニチャネルによって会員情報を一元管理できていれば、実店舗・ECサイトの双方で同じデータが共有されます。一元管理した顧客情報をもとに、細やかなプロモーションができれば、ロイヤリティの向上にもつながるでしょう。
在庫の一元管理
在庫情報を一元管理できる点もオムニチャネルの強みです。在庫情報を一元管理できると、一方に在庫がなくても、もう一方に在庫があれば手配して商品を販売できます。在庫切れによる販売機会の損失は、店舗にとって大きな打撃です。そのため、顧客体験の改善だけでなく、店舗の売上向上にも役立つでしょう。
コロナ禍で変化する実店舗での「顧客体験」
コロナ禍において外出自粛が推奨される中、ECに対するニーズは劇的に増加しました。一方で実店舗における顧客体験にも変化が生まれています。
アフターコロナの来店に期待することに関する調査結果によると、消費者の間では以下のような意見が多くあがっています。
- 実物を見て購入したいから
- 実物を試して購入したいから
- 店の世界観・雰囲気を楽しみたいから
- 店舗でしか食べることのできないメニューがあるから
- 複数人で外食する場合は、店舗の方がコミュニケーションを楽めるから
結果からは、店舗内でリアルな顧客体験を楽しむことへのニーズが強いことがわかります。つまり、ウィズコロナ・アフターコロナの世界においては、実店舗ならではの顧客体験を追求できるかどうかがポイントとなるでしょう。
まとめ
実店舗やECを取り巻く環境は日々変化しています。とくに新型コロナウイルスの感染拡大は実店舗への来店機会を減少させ、消費生活にも大きな影響を与えました。
一方、いまだに実店舗の利用を好む消費者は多く、コロナ禍において実店舗ならではの顧客体験を求める方向に変化が生まれています。