- 最終更新日: 2020.07.31
- 公開日:2020.07.31
サブスクリプションと物流との関係について(実践編)
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物流コンサルタントの(株)リンクスの小橋です。前回サブスクリプションと物流の概念編では、サブスクリプションの定義と物流の関係性について触れました。そこでは、サブスクリプションが、これまでの「商品を中心」としたビジネスモデルから、「顧客を中心」とするビジネスモデルの変換を意図しており、物流もこれまでのQCD(Quality 精度 Cost 価格 Delivery 納期)だけで捉えるのではなく、顧客体験価値を上げる手段として考える必要性をお伝えしました。
目次
モノ系 サブスクリプションの定義
今回、実際にサブスクリプションを実現するために、物流として必要な機能や、物流としての考え方や、注意点をお伝えいたします。その前に整理すると、サブスクリプションはNetflixのようなサービス系、KINTOやairClosetのようなモノ系とに分かれますが、物流が絡むのは、フィジカルであるモノ系の物流の事となります。
モノ系のサブスクリプションでも、サプリなどの「定期購入型」と 使用目的だけの「シェアリング型」と、レンタル利用での「分割払い型」があります。分割払い型をサブスクリプションには含まれないとする考え方もあるかと思います。ただ、消費者が使う時だけ使用してみて、いらなくなったら、簡単に返却でき、在庫リスクもない事を考えると、消費者との継続的な繋がりから、モノを所有ではなく利用する価値を伝える点では、目的は同じではと考えます。洋服や高級バックなどのシェアリングサービスなどでも、消費者がそのモノを気に入れば、購入することができるので、共有と所有は消費者心理の変化です。
実際に家電商品の分割払いサービスを提供しているRentioでは、これまで価格などを理由に購入を躊躇っていたお客様に、少額の月額料金で実際に商品を試すことができるようにしています。お客様は商品の価値を理解した上で、所有することを決めることができるので、買った後にイメージと違ったなどのミスマッチをなくすことができ、対象となる顧客層を広げることに成功しています。また、何よりも重要なのが、使用中の消費者の声を聞き、メーカーへのフィードバック含め、商品開発に活かすことで、よりお客様の顧客体験を上げているモデルになります。継続的なつながりから、顧客体験を上げる意味でも、サブスクリプションモデルではと思います。
サブスクリプションの裏側(物流)
さて、肝心のサブスクリプションにおける物流ですが、商品をお客様に届ける点では、通常の物流と同じです。ただ、継続的に利用していただくため、その商品が戻ってくることを想定した物流設計を行う必要があります。
通常インターネット通販では、商品が戻ってくる返品は、日本の場合は10%以下と少ないですが、サプリのような定額通販でない場合は、返却することが前提条件になっています。一度使用した商品を返却して、再利用のためにクリーニングなどでの再生加工を行います。返品から再生までの通常の商品出荷とは逆の流れになるので、何かと手間もかかり厄介です。
通常のネット通販における物流コストの50%近くを占めているのが配送費のため、サブスクリプションの商品返却にかかる物流コストを含めると配送費は、通常の2倍かかる計算になります。さらに、クリーニングなどの費用を含めると物流比の割合はとても高くなります。また、多くのお客様のニーズに応えるためには、商品のラインナップが大切で、多くの在庫を抱える必要があります。
また、サプリなどの定額通販の場合でも、返品は少ないですが、お客様毎の購入商品や購入頻度にあわせて、同梱する販促品を変えています。こちらもお客様に寄り添った物流を設計することで、継続顧客の離脱を防ぎ、顧客体験の向上に繋がっています。
このようにサブスクリプションの物流を構築する場合には、利用者であるお客様と物流も繋がっているので、お客様にあわせてのカスタマイズや、返却され再利用される商品サイクルを考慮し、何かと嵩む物流コストをどう抑えるかを考えた物流設計が重要となります。
サブスクリプションモデルへの決断
前職の物流会社で、2016年頃、サブスクリプションがメディアでも多く取上げられ、多くの企業から物流の相談がありました。倉庫に眠る大量の在庫を生かして、新しい販売チャネルのひとつとして考えられていましたが、実的な物流コストを試算してお伝えすると、物流にかかる費用に驚かれていました。
大量消費の時代の物流は、その需要を止めないために、生産性をあげて大量にモノを卸先や、店舗に届けることが極めて重要でした。物流も比較的シンプルでした。そのため、物流はどちらかと言うと軽視されており、物流はコストだけで議論されていました。
モノ余りの時代に、そもそも消費者は自分にとって必要なものしかいらない、サブスクリプションもそんな消費者のニーズから生まれたビジネスモデルのひとつです。物流も、ある意味わがままになった消費者のニーズに応えるために、仕組みを変える必要があります。これまでの考え方だけでは、物流も立ち行かなくなる時代に突入しています。商流であるビジネスモデルの変化に合わせた物流を設計することが、今後物流にも求められていると思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。最終回である次回は、サブスクリプションサービスの未来についてお伝えいたします。