- 最終更新日: 2021.05.31
- 公開日:2021.05.31
続々誕生するサブスク新サービス、成功するための秘訣とは?
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EC・通販業界で大きな話題を集めている「サブスクリプション」。コロナ禍でもニーズが高まり、ファッションや家具、日用品、食品、飲食店などの新たなサービスが続々と誕生しています。一方、話題が先行するなかで、採算が合わずサービスを終了するケースも出てきています。話題のサブスクリプションサービスについて、最新トピックスをまとめ、成功の秘訣について探りました。
目次
サブスク認知度は9.5割、サブスク利用者は約8割に
「サブスクリプション」サービスは、月額料金でサービスを何度も利用したり、商品をレンタルしたりすることができるサービスで、これまでは動画・音楽配信・電子書籍などのWEBサービスが中心でしたが、ここ数年で物販やレンタルなどを含めたあらゆるものがサブスク化し、商品やサービスの新たな販売手法として普及してきています。
ランク王(株)が2020年10月に発表した「サブスクリプションサービスに関する調査」によると、サブスクリプションを「知っている」と回答した人は全体の9.5割に上り、このうち約8割が実際にサブスクを「利用している」ことがわかりました。この調査は男女を問わない10~50代の1000人が対象で、調査結果を見ても世代を問わず、サブスクが消費者に浸透してきていることが見て取れます。
EC・通販業界の動きとしては、2018年12月にサブスクリプションサービスを提供する事業者などで構成される一般社団法人日本サブスクリプションビジネス振興会という団体が設立されました。同振興会が19年・20年の12月に開催した「日本サブスクリプションビジネス大賞」(以下、サブスク大賞)は、マスコミでも取り上げられ、一大イベントとなっています。
サブスクの利用率、1位は動画配信サービス・2位は音楽配信サービス
サブスクリプションはさまざまなジャンルがありますが、前述の調査では、一番使っている「ジャンル」に関する質問で、最も回答が多かったのは、「Netflix」「Hulu」などのVODと呼ばれる動画配信サービス(57.6%)で、2位は「Spotify」「Apple Music」などの音楽配信サービス(24.2%)、3位が電子書籍読み放題サービス(12.1%)、となっています。
こうして見ると、普及率が高いサブスクサービスは圧倒的にWEBコンテンツ系のサービスとなります。ですが、ファッションや家具・家電、日用品や食品など、ここ数年で登場したレンタルや物販系サブスクサービスも、順調に利用者を拡大させ、成長を続けています。新たにスタートしたサービスも多く、まとめてご紹介していきたいと思います。
東急・アスクル・大丸松坂屋百貨店などが新サブスクサービスを開始
それでは、昨年の後半から今年の上半期に誕生した8つの新サービスについて、見ていきたいと思います。
定期券保有者限定のサブスクサービス「TuyTuy(ツイツイ)」
東急(株)が5月12日に開始した、東急線区間を含むPASMO定期券を持つ利用者対象のサブスクリプション型サービス「TuyTuy(ツイツイ)」。第1期実証実験の段階で、サービス期間は5月12日から7月31日までとなっています。定期券を持つ人への付加価値を目的としたサブスクで、東京電力エナジーパートナー(株)、(株)Luup、(株)Nature Innovation Group、(株)パンフォーユー、(株)日比谷花壇がサービスに参画しています。
5月と6月は無料で、7月は月額500円(税込)でサービスを提供。第1期で利用できるのは、『充レン』(モバイルバッテリーレンタルサービス。期間中何度でも使い放題)、『LUUP』(電動マイクロモビリティシェアリングサービス。月に5回(1回につき30分)まで利用可能)、『アイカサ』(傘シェアリングサービス。月に何時間でも何度でも同時に2本まで使い放題)、『パンスク』(パンの定期便サービス。初回利用に限り1000円引き)、『ハナノヒ』(花の定額制サービス。初回登録に限り月に6回まで1回1本、対象の切り花を店舗で受取可能)、『TuyTuyワンデーパス』(東急線全線一日乗車券)の6つ。「ついつい」利用したくなるサービスとなるのでしょうか。
ひかりTV『サブスクリプションサービス 定期便』
(株)NTTぷららが運営するショッピングサービス「ひかりTVショッピング」で今年の3月に始まった食品や飲料、日用品などの商品を割引価格で定期的に届けるサービスです。
約1000点の対象商品の中から、定期的に商品を届けるサービスで、商品は通常価格から最大5%割引、配送料無料です。また、通常の注文と同様、商品ごとに設定された倍率での「ポイント」を進呈。商品が不要な回は無料で配送を「スキップ」できるほか、いつでも「解約」でき、支払いは、商品の出荷ごとにクレジットカードで払う「都度支払い」となります。食品や飲料、日用品などがお得な価格で定期的に届けられるので、購入する商品がだいたい決まっている人にとっては、利用価値が高いサービスだと思います。
https://shop.hikaritv.net/shopping/static/s_subscription/data/index.html
大丸松坂屋百貨店のファッションサブスク「AnotherADdress」
(株)大丸松坂屋百貨店が4月1日にオープンしたファッションサブスクリプション事業『AnotherADdress (アナザーアドレス)』。これまでの百貨店の構造から、社会や環境にとって持続性の高いビジネスモデルへの転換をめざすサービスとして登場しました。月額1万1880円(税込)で、ブランドの中から3着レンタルできます。1回の注文につき1アイテムまで交換が可能で、「お気に入りのアイテムは、会員価格で購入もできます。
取り扱いブランドは、上質な「百貨店ブランド」から50ブランドをラインナップ。 『AnotherADdress』では、ファッションの本質的な価値やサステナブルな取り組みを重視。「Another=別の」+「Address=住所」という「別の場所」 で、ファッションをより楽しめるサービスとなっています。
https://www.anotheraddress.jp/
月額2200で読み放題のサブスク『週刊文春 電子版』
(株)文藝春秋が3月に開始した『週刊文春 電子版』。月額2200円で「週刊文春」のすべての特集記事が読み放題となります。記事は雑誌発売日(通常木曜日・首都圏基準)の前日の16時に読むことができます。
毎週、グラビア・連載コラムなどを除く特集記事約20本が配信され、記事1本からの購入も可能。約1年分の過去記事も読み放題で、編集長をはじめ、担当デスクや記者による取材の舞台裏など、限定オリジナルコンテンツを会員限定ニュースレターとして配信します。社会的な影響も大きい「週刊文春」のスクープを雑誌発売前にスマホやPCで読むことができるのは、付加価値や利便性が高いサービスと言えるでしょう。
無印良品の「家具の月額定額(サブスクリプション)サービス」
「無印良品」の(株)良品計画が1月から本格的に開始した無印良品の「家具の月額定額(サブスクリプション)サービス」。国内182店舗で実施し、暮らしの基本となるベッドやデスク、チェア、収納用品などを月額300円からレンタルできます。年単位の契約で、1~4年のプランがあり、選んだプランの期間が満了した際には、「解約・返却」「契約延長」を選択するか、希望すれば買い取り料金を支払い、そのまま使いこともできます。
「買ってもよし、借りてもよし」という選択肢を提供し、一人ひとりのユーザーの暮らしに合った家具の選び方を提案。コロナ禍で在宅勤務の人が増えていることから、テレワーク期間に必要なアイテムだけを低価格で利用することができる同サービスは、ニーズが高そうです。
https://www.muji.com/jp/feature/monthly-plan/index.html
アスクルのBtoB向けサブスク「家具レンタルサービス」
オフィス用品通販のアスクル(株)が、BtoB通販サービス「ASKUL」で1月から開始した本格的なオフィス家具がレンタルできる「家具レンタルサービス」。対象エリアは1都3県で、月額2500円から新品の家具がレンタルできます。1年間使用した場合は、無償譲渡されます。
ASKULサイト、またはソロエルアリーナの会員が対象で、対象エリアは1都3県(東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県)。対象の商品は快適な座り心地で人気の有名メーカーオフィスチェア35商品です。レンタル価格は月額2500円(税別、配送料手数料1脚5000円)からで、組立サービス(料金別途)の利用もあります。1年間使用した場合も通常価格を超えない価格に設定され、初期コストを抑えて導入することできます。テレワーク中の社員の満足度アップなどの効果も期待できそうです。
https://www.askul.co.jp/f/services/furniture/rental.html
眼鏡のサブスク『メガスク』
「メガネスーパー」などを展開する(株)ビジョナリ―ホールディングスが昨年12月に開始した、月額 1000円でレンズやフレームを何度でも交換できるメガネのサブスクリプションプラン『メガスク』。初期費用を抑え、自分にあったレンズや好みのフレームを気軽に選択できるようになるほか、都度、特別価格で交換できるため、常に自分の眼の状態に最適なメガネを利用できるサービスです。
『メガスク』には、レンズ交換を対象とした「メガスク レンズ」と、フレーム交換を対象とした「メガスク フレーム」の2種類あり、それぞれ1000円・2000円・3000 円の3コースから、購入した対象のレンズ・フレームの金額に応じたコースに加入できます。解約の際は、加入時に選んだ商品価格と保証料金(1000 円コースなら1万800円)の合計から、それまで支払った合計金額の差額を一括で支払うだけで、利用中のメガネはそのまま使えます。自分に合ったオシャレ眼鏡、自分の目に合ったレンズなどを、何度も試すことができるので、眼鏡選びの失敗がなくなりそうです。
https://www.meganesuper.co.jp/glasses/service/megasc/
シャープ製マスクのサブスク『マスク定期便サービス』
シャープ(株)が昨年12月に開始した定期的にマスクが届くサブスクサービス『マスク定期便サービス』。月額1650円(税込)で毎月30枚の日本製不織布マスクが自宅に届きます。都度マスクを購入する手間が省け、買い忘れの心配がなくなるほか、自宅ポストに商品が届くため、不在時の受け取り不安も解消されます。
成人男性の利用を想定した「ふつうサイズ」(約175×95㎜)、女性や小学校高学年以上の子ども向けの「小さめサイズ」(約145×95㎜)の2コースがあります。販売価格は1箱30枚入り1650円(税込・送料無料)で、1人につき各コース(ふつう/小さめ)最大10箱まで申し込み可能。初回発送以降は、約30日サイクルで毎月発送され、発送済み商品でなければ、いつでも解約できます。昨年のコロナ初期、マスクが手に入りにくかった頃にいち早くマスク製造に着手したシャープ。日本品質の信頼度も高く、不織布マスク利用者にとって利便性が高い人気サービスとなっています。
https://cocorostore.jp.sharp/maskteiki
ZOZOの「おまかせ定期便」・資生堂の「Optune」などがサービス終了
多くのサービスがスタートするなか、終了するサービスも出てきています。
ZOZO「おまかせ定期便」はサービスと会員の相性合わず?
(株)ZOZOは19年4月、2018年2月にスタートしたファッションアイテムのサブスクサービス「おまかせ定期便」を終了しました。「おまかせ定期便」はアパレルの知識に精通したスタッフがコーディネートしたアイテムを定期的に届けるサービス。申込時のアンケートで、利用者の好みのテイストを聞き、その回答と注文履歴などを独自のアルゴリズムで解析し、最適な商品を選定していました。
新規会員からは好評でも、既存会員の利用率は伸びなかったようです。これは会員とサービスとの相性もあり、既存のZOZO会員はファッションがそれなりに高く、コーディネートのサービスを必要としない人が多かったようです。
資生堂「Optune」は多様なニーズに対応できず?
(株)資生堂は昨年6月、19年7月から開始したパーソナライズ・スキンケアサービス「Optune(オプチューン)」を終了しました。同サービスは月額1万円(税抜)で美容液を抽出するスマホアプリと連携したIoT機器を貸し、その機器が毎日の個人の肌環境に合わせた美容液を抽出するという画期的なものでした。19年のサブスク大賞でもブロンズ賞を受賞するなど、注目を集めていましたが、サービス開始から1年経たずに終了となりました。
サービス終了の理由は特に明らかになっていませんが、同社のサービス終了のご案内から判別すると、利用者から多くの改善の要望を受けていたようで、これらのさまざまな要望に応えるには、採算が合わなかったのだと思われます。
スーツサブスク、家電サブスクなどもサービス終了
そのほか、ファッション関連では、(株)AOKIのスーツサブスク『suitsbox』が18年12月にサービス開始からわずか半年でサービスを終了しました。また、資生堂の「Optune」とともに19年サブスク大賞でスポンサー賞を受賞していたダイソン(株)のダイソン製家電サブスク「ダイソンテクノロジープラス」も、6月30日でサービスを終了する予定となっています。
このように、新たなサービスが続々と登場している反面、さまざまな理由で大手企業でもサービスを終了するパターンも出ています。単にサービスや商品をサブスク化すれば、売上が上がるのではなく、成功するためには緻密や戦略やノウハウが必要だということがわかります。
サブスクビジネスで成功する消費者の4つのニーズとは?
サブスクビジネスでの成功の秘訣は何なのでしょうか? まずはサブスクサービスに対する消費者側のニーズをくみ取る必要があります。消費者のサブスクニーズとしては、大きく分けて4つあると思います。このニーズを満たすことが成功の近道になると思います。
サブスクには「お得感」が必要!
まず、サブスクサービスを利用するにはまずお得感があることが重要です。商品を複数購入したり、サービスを複数回利用したりするより、月額にした方がお得にならないと、サービスを利用する意味がありません。ただ、いくら消費者ニーズを満たしても、事業として採算が取れる価格帯であることが前提です。消費者がお得感を抱きつつ、採算が取れる価格帯の設定が最も難しく重要なものになるかもしれません。
サブスクサービスとは利便性を高めるもの
次に、利便性です。その商品を毎月買っているのであれば、サブスクにすれば毎回注文する手間をはぶくことができます。サブスクにすれば利便性が高くなるようなサービスにする必要があります。
魅力的な商品であることや、商品やサービスを利用しても安心だと思われるような企業としての信頼度も必要でしょう。
サブスクにプラスαの特典を
次は、そのサブスクを利用するプラスαの特典です。サブスクサービスの質は高ければ高いほどいいのですが、そのサブスクにしかない独自の価値があると、消費者がサービスを利用する意欲が高くなります。
どこにもない商品を取り扱っていたり、ポイントが貯まったり、オリジナルグッズがもらえたり、他のサービスで割引が適用されるなど、なんらかのプラスαのメリットが欲しいところです。
そのサブスク、継続したいですか?
最後は、継続したい内容かどうかです。企業側からの視点に言い換えると、サブスクサービスを継続してもらう仕組みづくりです。前述のZOZOによる「おまかせ定期便」を例にすると、ショップスタッフによるコーディネートのサービスを一定期間継続した利用者は、サービスによって自らのファッションセンスを向上させ、商品を自分で選べるようになり、解約してしまうケースが考えられます。
ノウハウを得て卒業してしまうパターンですが、このようなケース以外でも、商品やサービスを使い尽くして飽きられてしまう場合など、利用者に飽きられないような継続を促す仕組みづくりも必要だと思います。
企業側の都合をサブスクビジネスに持ち込むと失敗しがち?
企業側からすると、サブスクは継続利用による安定的な収益が見込める、一旦契約してもらえると、その人にセールスする必要がなくなる、サブスクサービスをどのように利用したかなどの顧客データを蓄積することができるなど、さまざまな恩恵があると思います。ただ、このメリットは上記の消費者ニーズを満たした場合にうまくいくのであって、一方的に利益を求めてはうまくいきません。
新たなサービスとの新陳代謝が盛んなサブスクサービスですが、成功しているサブスクサービスもたくさんあり、それらのサービスに学ぶべきことは多いかもしれません。第二回は成功しているサブスクサービスを紹介していきたいと思います。
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