- 最終更新日: 2020.04.17
- 公開日:2020.04.17
【EC座談会2020】#10 フルフィルメントの重要性 後編
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大手食品メーカーD2C新規事業開発の責任者と、コスメD2C事業の経営者の2名の相談者を交えて【EC座談会2020】を実施しました。今回は10回目(最終回)の連載となります。
目次
3PL導入時の運用管理やコスト面について
相談者田中部長(以下、田中):
児嶋社長にお伺いします。顧客に商品をお届けする発送業務ですが、運用体制とコスト構造について、事業の立上げの際は自社で実施されていましたでしょうか。弊社は、食品関係ということもあって、可能であれば自社発送で対応できないか検討しています。実際の運用管理やコスト面など教えて頂けると幸いです。
相談者児嶋社長(以下、児嶋):
弊社は賃貸ビルでのスタートアップでしたので、事業当初から3PL会社にお願いしています。見積比較したわけではないというか、見積の根拠や、どう交渉すればコストダウンになるかも知らない状態でしたので、紹介頂いたところにお願いしました。
それでも、事業規模の拡大に合わせてサービスレベルの向上をするには、見直しも必要かとは思っています。3PLパートナーからいただいた見積は、次のような項目と単価数量になっています。
商品の入庫と発送に関する付帯作業費用
入荷料 | 単位 | 詳細 |
入荷料(ケース) | CS | ケース入荷の場合(員数検品なし) 外観検査のみ ※1ケース1アイテムに限る |
入荷料(員数検品) | 点 | 入荷時に数量検品を行う場合 検品は外観検査のみ |
付帯作業 | 単位 | 詳細 |
追加商品ピッキング作業料 | 点 | 商品ピッキング料として |
エアーパウチ梱包料 | 枚 | パッキング+資材費 ※使用した場合 |
プチプチ緩衝材 | 枚 | パッキング+資材費 ※使用した場合 |
商品などシール貼り料 | 枚 | シール貼り料として ※使用した場合 |
弊社は、自社パッケージを納品して利用していましたので、以下の資材は利用していませんでしたが、共有資材であればコストは安くなると聞いています。
資材費用
資材費 | 単位 | 詳細 |
60サイズ資材 | 枚 | 3PL会社の規定サイズの場合。無地茶箱(外寸:290x220x80) |
80サイズ資材 | 枚 | 3PL会社の規定サイズの場合。無地茶箱(外寸:370x270x150) |
自社資材を利用する場合は、保管料と、発注・在庫管理は自社内業務として発生しますね。発注ロットとの関係や、デザイン変更などあると別途費用が必要です。
発送運賃費用
出荷料 | 単位 | 詳細 |
出荷料(60サイズ)宅配 | 件 | 同一同梱物3点まで。梱包、納品書、配送料として |
出荷料(60サイズ)宅配 ※離島 |
件 | 同一同梱物3点まで。梱包、納品書、配送料として |
出荷料(80サイズ)宅配 | 件 | 同一同梱物3点まで。梱包、納品書、配送料として |
出荷料(80サイズ)宅配 ※離島 |
件 | 同一同梱物3点まで。梱包、納品書、配送料として |
弊社は、DM便での出荷発送が無いので上記の費用項目になりますね。
保管費用
保管 | 単位 | 詳細 |
保管料 | PL/月 | PLサイズ:縦110㎝x幅110㎝x高110㎝(最大) |
保管料には、上記以外、棚、ラックスペースの利用料がかかっています。保管料は、1日あたりの出荷件数とSKUでスペースがコントロールされますので、売上計画に基づいてのオーダーが大変重要になります。
そして、今大変課題となっている、返品処理費用ですが、これは配送会社以外の費用です。
返品処理費用
返品 | 単位 | 詳細 |
返品作業料 | CS | 返品情報作業として(商品検品は除く)※運送途中の戻り品のみ |
未開封であれば、そのまま良品として顧客にお届けすることになりますが、その際に先出しするための、ECシステム側でのWMSとの連携の在庫反映はそれなりに大変です。
最近よくある、返金保証などのモデルを導入する場合ですが、梱包開封、ご利用後の返品を受け付ける際の顧客IDと返品内容をチェックするシステム機能が、ECシステム側に必要です。後、返品後の商品の廃棄処理のコストが掛かりますので、十分に留意が必要です。
これは、通常の配送タリフとは別タリフになりますので、結構高額になります。
返品運賃費用
運送&資材 | 単位 | 詳細 |
返品着払い運賃 | 実費 | — |
実棚(実在庫数)カウント費用に関してですが、弊社では、会計上の管理で、6カ月に1回お願いしていました。月末の繁忙期などは大変苦労を掛けるので、その時期を避けてカウントして頂いています。
実棚管理費用
実棚費用 | 単位 | 詳細 |
実在在庫数カウント報告費用 | 個別見積 | *作業時間単価計算 |
後は、3PL会社の指定か、ECシステム側の連携しているWMS(Warehouse Management System:倉庫管理システム)費用になります。
WMS費用
WMSシステム | 単位 | 詳細 |
システム使用料 | 件 | 事務管理手数料として(出荷件数に対して課金) |
システム管理料 | 月 | WMS月額使用料 |
WMSシステムは、ECシステムと同様に固定+従量課金となっていますね。
アドバイザー吉村(以下、吉村):
ECシステム側でも、売上・仕入(発注)・生産といった業務処理と連動した在庫管理=在庫数の更新を行っていますが、それらは在庫数を把握するだけですね。
ECシステム側でもトータルピッキングリスト発行や、個別作業指示書をバーコード検品でできるようにしたり、発送伝票との一体型での作業ミスを無くしたりなど、さまざまな機能を実装できるものもあります。出庫やピッキングといった発送業務の入出庫作業はサポートしませんのでWMSは必要です。
これ以外に、ダイレクトメールの発送なども、一緒にやって頂ける3PL会社であれば運用上メリットはありますね。双方にとって運用しやすいルールにしないとコストメリットは出てきませんので、運用手順を定期的に情報交換して課題改善、業務効率を上げるといいでしょう。予め1、2か月後の出荷予定数なども伝えておくと、信頼と安心感が生まれます。
今後、人件費は上昇することはあっても、下がることはないと言われていますので、コストアップを将来想定して事業計画しておいたほうがベストです。
田中部長の会社では、自社物流で対応予定とのことですが、toB向けの業務と違い、個別発送はそれなりに工数がかかりますので、児嶋社長からご開示頂いた見積項目に従って、自社の作業工数(タクトタイム)とコストを算定されると良いかと思います。
繁閑の波動が、日次、週次、月次、年次でそれなりにありますので、他の部門からの応援体制や臨時のパートさんの量的確保だけではなく、業務品質を確保するための教育やチェック体制を設計・検討ください。
カスタマーセンター委託と運用について
児嶋:
田中部長の会社は、お客様相談室などがあるので、今回のEC事業では、自社でカスタマーセンターを運用されるのですか。
田中:
弊社は、お客様相談室はあるのですが、基本業務はコーポレートサイトのお問合せフォームからの対応や、PL関係で製品記載している固定電話(フリーダイヤルではない)への電話対応を担っています。普段は滅多に対応業務が入ることはないので、管理部門が兼任で対応しています。EC事業のカスタマーセンターはどうしようか迷っています。児嶋社長のところは自社でしょうか。
児嶋:
弊社は、コスメティックスを扱っている関係で、お客様へのご案内は、2つに分けています。
購入前と後のお客様からの商品に関するお問合せは、カウンセリングセンターとしてお客様にご案内しています。ここで得られたお客様の課題や悩みを商品開発に生かして行きたいのと、スタッフのやる気を引き出すためです。
商品のご利用方法に関するご案内以外の、定期スキップや解約、商品配送に関することなどは、外部のコールセンターにお願いしています。
田中:
ありがとうございます。お客様の声は大切だと皆さまから言われますので、運用体制は参考になります。外部のコールセンターのコストはどれくらいでしょうか。
児嶋:
現状のパートナー会社の見積項目と数量については先ずは、立上げ時に必要なオペレータ導入研修費として、
が、発生しています。立上げは、協力パートナーとの信頼関係を構築する上でも、とても重要です。事前に協力パートナーからのヒアリングシートを提示頂くことや、受講前に自社製品を利用して貰うことも実施していました。
次に通常の基本業務費ですが、時間帯によって費用が変動増加しまして、
18時以降は高くなるのと22時以降は深夜加算が入ります。
出来れば可能な限りサービス提供したいのですが、コストとの兼ね合いで今は選択をやめていますね。
同様に、休日も平日に比較して単価費用は1.25倍以上に増加します。
委託する際の確認事項は、パートナーとなっていただくSV(スーパーバイザー)の業務品質です。こちらは、提示金額との見合いにもなりがちですが十分に相互で納得いく体制の確認などが必要です。
SVの人日数は、繁忙期や突発的な外部の要因、例えば弊社では、広告展開した際の受注受付がスパイク(コールが集中する時間)するときとか、地震や水害など地域甚災害などがあった場合のお問合せ対応など、CSRオペレータの稼働人数に応じて数量が変わってきます。オペレータ稼働5人以上でSVの1人日工数が増えてきます。
こちらは、当初良く理解できなかった項目ですが、品質管理費です。
品質管理費にはコンタクト分析、レポート、スクリプト作成などの費用が含まれていますので、業務品質のチェックや、改善を実施して頂いています。これを基に、弊社では、1カ月に1回を基本としてミーティングを実施しています。
以下は、設備費用になるので、自社展開しても同様の費用が発生するので参考程度にしてください。
弊社は0570番号で顧客にご案内していますが、FDと同様に回線費用は発生しています。回線管理費は、毎日の回線ログ抽出及びレポートの作成、FD管理費となります。呼量予測、必要人員予測等の人件費は含まれておりません。
その他の費用としては
- PC使用料 PC使用料(1台/月)
- 電話機使用料 電話機使用料(1台/月)
- 通話録音料 通話録音装置使用料(1台/月)
- ブース使用料 ブース使用料(1台/月)
になります。
事業展開するにあたって、一番困ったことが初期設定費用の数々です、ほぼ言い値のブラックボックスな費用として
- 電話回線設定費 NTT回線工事費(NTT支払/実費)
- 電話交換機設定作業(ベンダー支払/実費)
- NTTカスタマーコントロール回線設定費(1拠点につき)
- NTT回線工事費、並びに電話交換機設定作業(実費請求)
更には、初期準備費 (対応範囲によって金額が変動)
- 受注システム設定費
- PC設営費
- ネットワーク/セキュリティ設定費
これは、導入するECシステムやCRMシステムに応じて費用が変動するようです。
協力パートナーの乗換や、追加をすると同様のコストが発生しますので、永く付き合えるパートナーとめぐり合えることが大切と感じています。
ファシリテーター尺田(以下、尺田):
これからは、顧客側からみてのコミュニケーションチャネルは多様化していくと言われています。ですから、ECシステムでの連携では、エコシステムで最新のソリューションと連携して提供が可能なことが重要な選択肢となってきます。
音声系システムであればPBXとのCTI連携がどのように可能か、ECシステム側でのAPI設定で良いのか、専用のCTIシステムが必要かどうか。
FacebookやLINEなどのSNSでいえば、例えば、LINEチャットへの対応をどう連携するのか。その際に、チャットからLINE通話への連携とその対応システムはどうするか。などプラットフォーム側の指定のAPIや、関連するソリューションシステムとの連携方法、個別の追加開発なのか、追加モジュールなどの設定だけなのかを、先を見越して確認してください。
児嶋:
そうですね。顧客の態様の変化として、CRMでの課題にもなっていましたが、コミュニケーション環境については、電話は面倒、メールは開封しない、LINEは未読かブロックなどの態様があるので、お客様にとって最適なチャネルをご用意することが重要と考えています。
今のECシステムは、顧客からの情報受発信内容が、バックオフィス担当者にとってわかりにくく、ECシステムにあるコンタクト履歴や、受注履歴の備考欄に、テキストベースで担当者が入力しているだけです。こちらも課題なのですが、「見える化」するために必要な情報や、システムってどのようなものでしょうか。
アドバイザー滝沢:
弊社でも、同様の問題が発生しています。これは、ECシステム側で一括してコントロールすることが難しい機能なので、顧客とのコミュニケーション履歴を管理するCRMシステムを導入して、顧客ID連携するのがベターですが、ライセンス費用だけではなく導入費用と運用設計に戸惑いますね。
CRMシステムに履歴を保持しても、結果は、ECシステム側の顧客管理項目に登録されていないといけないと思いますので、顧客のリクエストに対する、リーズンと対応ステータスとソリューション結果は必須で、出来ればNPS(ネット・プロモーター・スコア)も取りたいですね。
尺田:
ありがとうございます。お話しは尽きないようですが今回のEC座談会は一旦こちらで終わりとさせていただきます。
本日はありがとうございました。