“モノのサブスク”でモノにコトをつないで新たな顧客層を開拓
西川株式会社
- 業種:
- 寝具・寝装品・インテリア用品
1566年創業の歴史に新たなページを加えた「Sleep Charge」
西川株式会社様は2021年9月、サブスクリプション(以下、サブスク)形式で寝具を提供するサービス『Sleep Charge(スリープ チャージ)』を開始しました。モノを取り扱うサブスクサービスは、デジタルサービスと違い、商品の発送や引き取り、交換などのプロセスが発生することから、さまざまなハードルを越えなければなりません。西川株式会社様は、サブスクサービスのシステム構築に取り組みながらも、ビジネスモデルを固定することなく、常に最適化を追求していています。その変化を続けるサブスクサービスの要件に対して柔軟に対応したのが、「GMOクラウドEC パッケージEC」プランでした。
購入に至るまでのハードルをサブスクで乗り越える
―― サブスクサービス「Sleep Charge」への取り組みにおける背景について教えてください。
横田拓之様(以下、横田様) 「Sleep Charge」の最大の魅力は、購入を決める前に、ご自宅で[エアー] マットレスや羽毛掛け布団を体験できるところにあります。実店舗でもその場で寝心地をお試しいただくことはできますが、日常生活で使ってみないと効果まではなかなか実感できません。[エアー] マットレスをご購入いただいた方の使用満足度は高いのですが、新規のお客様が購入に至るまでのハードルをいかに乗り越えるかがビジネスとしての課題でした。
そこで検討したのがサブスクです。サブスクを用意すれば、商品をお試しいただいた後にご購入いただくなど、顧客の選択自由度が高まるため、今までのユーザー様層に加えて、サブスクに慣れている年齢層、特に若い世代へのアプローチにつながると考えました。
東京オフィス 第5営業部 自社直営グループ
第2課(直営EC・サブスクリプション) 課長 横田 拓之様
武士朋之様(以下、武士様) サービスのスタート後に驚いたのが、複数商品を試してから購入に至るケースが多いことでした。それだけ睡眠へのこだわりを持つお客様が増えていることの証だと思います。製品の良さをアピールするには、サブスクというアプローチは最適だと実感しました。
サブスクがモノとコトを結ぶ大きなキッカケに
―― 創業が1566年で室町時代に近江の行商から始まっているという伝統をお持ちですから、サブスクのような新しいビジネスモデルは大きなチャレンジだったのではないでしょうか。
横田様 当社の事業主体は寝具・寝装品の卸売業です。一般消費者を対象としたBtoCビジネスでは、都内を中心として運営している直営店舗のほか、オンライン上の自社直営ECがあげられますが、そのEC事業も2018年に立ち上げたばかりです。時代に取り残されないために、会社がサブスクに目を向けたのは順当な流れでした。
武士様 実際に「サブスクリプション」事業を検討し始めたのは2019年の2月のことです。当時は「サブスクリプション」や「サブスク」という言葉は今ほど一般的ではありませんでした。しかし、ビジネスの上流設計をブラッシュアップさせるたびに、サブスクビジネスの可能性に広がりを感じましたね。特にモノづくりを重視してきた会社ですから、サブスクにチャレンジすることがモノとコトを結びつける大きなキッカケになったと思います。
東京オフィス 第5営業部 自社直営グループ
第2課(サブスクリプション)チーフ 武士 朋之様
――モノのサブスクではビジネスモデルがとても重要になります。「Sleep Charge」のビジネスモデルについて教えてください。
武士様 今回検討したサブスクモデルのポイントは、「お試しコース」をご用意したところにあります。リユース品の[エアー] マットレスを、商品発送日から14日間、お試しいただくというものです。お試ししていただいた結果、効果を感じて新品をサブスクで使用したい場合は「新品コース」、リユース品をサブスクで継続したい場合は「お手頃コース」に切り替える選択をしていただきます。さらに、新品の購入も選択できるのですが、こうした「新品コース」「お手頃コース」「新品購入」を選択していただいた場合は、お試しコースの代金が実質無料になります。
ちなみに、14日間の間に何も操作しない場合は、自動的に「お手頃コース」に契約が移行したうえで、お手元の商品を継続利用していただけるのですが、開発面ではこの設計が一番難しかったと思います。
あたりまえですが、「お試しコース」を終了して返却することもできますし、「お試しコース」を経由しないで、いきなり「新品コース」や「お手頃コース」をご利用いただくこともできます。
――単なるサブスクではなく、研究を重ねに重ねたビジネスモデルなのだと感じます。
民 敏幸様(以下、民様) 実は当初、寝具一式をサブスクで提供するという単純なビジネスモデルで進めていました。とはいえ、新しい取り組みですから、何が最適かを妥協することなく検討していった結果、[エアー] マットレスの効果をいかにアピールするかを追求したモデルにたどり着いたのです。
――その当初の段階でご採用いただいたのが「GMOクラウドEC パッケージEC」プランでした。
大阪オフィス 第5営業部 自社直営グループ
第2課(サブスクリプション) 藤田 洋一様
民様 衣料品関連のサブスクで実績をお持ちだったことと、定期課金を標準装備していること、それからカスタマイズに柔軟に対応できるという点が決め手となりました。将来にわたってビジネスのスケーラビリティ面から安心してお付き合いできるのではないかと。実際、ビジネスモデルを見直していくなかで既に仕様の変更が出ていますが、柔軟に対応していただいております。
藤田洋一様(以下、藤田様) サービスリリース以降もさらなる顧客体験の向上を目指して改修を重ね続けております。プロジェクトメンバーの皆さんには、これは無理かなと思える要求をしたこともありましたが、システムベンダーとしての領域を超え、私たちの課題解決に親身になって対応をしていただきました。当社の描いたサブスクビジネスを実現できたのは、プロジェクトメンバー全員の誠意のおかげだと思っています。
東京オフィス 第5営業部 自社直営グループ
第2課(サブスクリプション)民 敏幸様
モノのサブスクの課題は調達コストと物流コスト
――モノのサブスクには今後も多くの企業が取り組むと思います。そうした企業にアドバイスをぜひお願いします。
武士様 デジタルコンテンツなどのサブスクと違い、モノのサブスクはビジネス設計がとても難しいです。なかでも障壁となる最大の要素が、モノの調達コストと物流コストです。特に物流コストは常に悩みの種ですね。売れば売るほどコストが上乗せされます。
藤田様 「Sleep Charge」をリリースするにあたっては、返送コストやリユース品のクリーニングなど、弊社の努力だけではどうすることもできない課題にもぶつかりました。回収とクリーニングを依頼できる協業先自体が少なく、あったとしてもシステム化していないなど、今の体制を実現するには一筋縄ではいきませんでした。それに加えて、私たちにはサブスク自体のノウハウがありませんでしたから、まさしく勉強をしながら開発を続ける毎日でした。私たちだけでなく、協業先企業の担当者全員が120%の力を出していただいたからこそ、成功できたと言い切れます。
民様 これからモノのサブスクに取り組もうとするときは、物流コストの壁に必ずぶつかります。でも、その壁を乗り越える方法は必ず見つかると思います。「サブスク」という言葉の枠に囚われることなく、顧客の課題解決を純粋に考えたビジネスモデルを設計することが新規ビジネス成功へのカギになるかと思います。
――最後に今後の展望について教えてください。
「Sleep Charge」で提供している[エアー] マットレス
武士様 「Sleep Charge」を昨年9月に無事リリースして以降、SaaSでいうオンボーディングと位置づけている「お試しコース」から、3割以上のお客様が「お手頃コース」や「新品コース」、「新規購入」へとつながっています。また、従来の販売チャネルとは異なる若い年齢層の開拓にも成功しました。今後、さらに多くの生活者に本サービスを知っていただくことが目下の目標です。GMOメイクショップのプロジェクトメンバーのみなさんと一緒に、これからも常に改良を続けながら、睡眠の大切さとすばらしさを生活者に伝えていきたいと思っています。
横田様 人生の3分の1は睡眠です。毎日約8時間は寝具の上で過ごし、眠っている間は、寝返りを打つとはいえほぼ同じ体勢を維持することになります。寝具はその間、無意識のうちに身体を守ってくれている大切な道具であり、質の良い睡眠が得ることで、翌日のパフォーマンスアップになります。そうした身体に大切な寝具を扱っている企業であるという意識を強く持ち、これからも生活者に寄り添い、生活者のお声に耳を傾けて最適な商品とサービスを提供していきたいと思います。